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増築した家を売るときは何を確認する?登記と建物の現況が違うケース

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増築した家を売るときは何を確認する?登記と建物の現況が違うケース

増築した家を売るときは何を確認する?登記と建物の現況が違うケース

2026/09/05

はじめに

戸建住宅を売却するために登記事項証明書を取得したところ、「登記には延床面積80㎡と書いてあるのに、実際の家はもっと広いように見える」ということがあります。所有者に確認すると、「昔、親が一階に部屋を増やした」「ベランダ部分を囲ってサンルームにした」「二階を少し広げた」「車庫の上に部屋をつくった」といった話が出てくることがあります。長年その家で暮らしている家族にとっては日常の一部になっていても、不動産売買の段階になると、その増築部分が登記や建築関係の手続きにどのように反映されているのかを確認する必要が出てきます。

ここで最初に整理したいのは、「登記されていない増築」と「建築基準法上の手続きに問題がある増築」は同じ意味ではないということです。建物の登記は、不動産登記法に基づいて建物の所在、種類、構造、床面積などを公示する制度です。一方、建築確認は、建物を新築・増築するときに建築基準法などに適合した計画かを審査する制度です。増築後に登記が変更されていないからといって直ちに建築基準法違反と決まるわけではなく、反対に登記上の床面積が現況と一致していても、建築関係の手続きまで問題がないことを意味するわけではありません。

増築した住宅を売却するときに最も大切なのは、「登記」「建築上の手続き」「現在の建物」の三つを別々に確認し、その違いを整理することです。

 

不動産登記法では、建物の表題部に記録されている床面積などに変更が生じた場合、原則として変更があった日から1か月以内に変更登記を申請することとされています。したがって、床面積に算入される増築を行ったにもかかわらず登記が変更されていない場合には、売却前に建物表題部変更登記が必要になることがあります。

また、増築当時に建築確認が必要だったかどうかは、増築した時期、場所、面積、建物の規模などによって確認しなければなりません。現在の制度では、防火地域・準防火地域以外で行う10㎡以内の増築などについて建築確認が不要となる場合がありますが、確認申請が不要だからといって建ぺい率、容積率、接道、構造など建築基準法の規定に適合しなくてよいわけではありません。福岡市も、10㎡以内で建築確認手続きが不要となる増築であっても法に適合したものでなければならないと案内しています。

増築された住宅は決して珍しいものではありません。特に築年数の経過した戸建住宅では、家族が増えた時期に一部屋増やしたり、生活に合わせて住宅を拡張したりしていることがあります。そのような住宅を売るとき、単に「未登記部分があります」と説明して終わらせるのではなく、どこが増築され、何が確認でき、何が確認できていないのかを整理することが、売主にも買主にも重要になります。

 

 

 

 

 

 

 

第1章:増築した住宅で「登記と現況が違う」とはどういうことか

 

1-1. 登記事項証明書には建物の床面積が記録されている

土地や建物には、それぞれ法務局で登記記録が作られています。建物の登記事項証明書を見ると、所在、家屋番号、種類、構造、床面積などが表題部に記録されています。例えば「木造瓦葺2階建」「1階70.00㎡、2階40.00㎡」といった形で、その建物について登記上どのように把握されているかを確認できます。不動産売買では、まずこの登記情報を基礎資料として建物を調査します。

ところが現地へ行くと、登記図面や床面積から想定する建物より明らかに大きいことがあります。一階の外壁が途中から延びている、住宅の裏側に一室追加されている、二階部分が後から張り出しているなど、外観から増築の可能性に気付くこともあります。所有者が「ここは後から増やした部屋です」と覚えていることもあれば、相続した住宅などでは現在の所有者自身が増築の経緯を知らない場合もあります。

登記事項証明書に記載された床面積と現在の建物の形や大きさが異なる場合には、まず「いつ、どこを、どの程度増築したのか」を確認するところから調査が始まります。

ここで注意したいのは、建物に何かを取り付けたからすべて登記上の床面積が増えるわけではないことです。庇、バルコニー、簡易な物置、サンルームなどは、その構造や形態によって登記上の扱いが異なることがあります。また壁で囲われた空間であっても、具体的な構造を見なければ床面積への算入について判断できません。そのため、所有者が「ここは増築です」と話していても、直ちに何㎡の未登記増築と確定するわけではありません。

売却実務では、登記事項証明書だけでなく、建物図面・各階平面図、固定資産税関係資料、建築確認関係書類、現地の建物形状などを照合します。それでも判断できない場合には、土地家屋調査士へ建物の現況確認や変更登記の必要性について相談します。売却前にこの違いを把握しておけば、契約直前になって初めて未登記部分が判明するような事態を避けやすくなります。

 

1-2. 増築したら原則として建物表題部変更登記を確認する

建物を増築し、登記されている床面積や構造などに変更が生じた場合には、建物表題部変更登記の対象となります。不動産登記法第51条では、建物の表題部に記録された一定の事項に変更があった場合、所有者は原則として変更の日から1か月以内に変更登記を申請することとされています。増築して床面積が増えた場合は、その代表的なケースです。

しかし、築年数の古い住宅ではこの手続きがされないまま数十年経過していることがあります。「工務店に頼んで増築したので全部終わっていると思っていた」「固定資産税が増えたので登記も変わっていると思った」という話もありますが、建築工事、固定資産税の家屋評価、不動産登記はそれぞれ別の制度です。自治体が現況を確認して固定資産税を課税していることと、法務局の登記記録が変更されていることは同じではありません。

増築部分について固定資産税が課税されていても、それだけで増築部分の登記が済んでいるとは判断できないため、法務局の登記記録を別に確認する必要があります。

反対に、登記面積と固定資産税の課税面積が異なっていることもあります。これは床面積の算定方法などによって差が生じる場合もあるため、数字が違うから直ちに未登記増築と決めつけることもできません。大切なのは複数の資料を照合し、「どの数字が何の制度で算定されたものなのか」を分けて考えることです。

建物表題部変更登記を行う場合には、通常、土地家屋調査士へ依頼して増築部分を含む建物を調査・測量し、法務局へ申請することになります。増築時の図面などが残っていれば有力な資料になりますが、古い増築では資料がないこともあります。その場合でも現況や保管資料などを基に登記の可否を検討しますので、「昔の増築だからもう登記できない」と考える必要はありません。

1-3. 「未登記増築」と「違法建築」は同じ言葉ではない

未登記増築という言葉を聞くと、「違法に建てられた家なのではないか」と不安になる人がいます。しかし、登記されていないことと建築基準法上の問題は別に確認する必要があります。不動産登記は不動産の物理的な状況などを公示する制度であり、建築確認は建築計画が建築基準法などへ適合しているかを確認する制度だからです。

例えば、増築当時に必要な建築確認を適切に行い、工事も計画どおり完成しているものの、その後の建物表題部変更登記だけ行われていないケースは考えられます。この場合、登記については未登記増築部分があることになりますが、建築確認手続きをしていない増築とは状況が異なります。一方、登記は変更されていても、建築確認や建築基準法上の適合性に別の問題がある可能性はあります。

「登記されているか」と「建築基準法上適切に増築されているか」は別々の確認事項であり、どちらか一方だけを見て住宅全体を判断することはできません。

さらに、増築当時に建築確認が必要だったかどうかも確認します。現在、建築基準法では原則として一定の建築行為について建築確認を求めていますが、防火地域・準防火地域以外における10㎡以内の増築・改築・移転には確認申請の例外があります。ただし、確認申請が不要であっても建築基準法の各規定への適合まで不要になるわけではありません。

古い増築については、現在のルールだけを見て当時必要だった手続きを断定しないことも大切です。建築基準法は長い間に改正されており、建築時点の法令や地域指定などを調べなければならない場合があります。売却実務では「確認済証がない=違法」と短絡的に決めるのではなく、いつ増築されたのか、その時点でどのような手続きが必要だったのか、行政にどの記録が残っているのかを確認していきます。

 

1-4. 増築の時期と工事内容をできる限りたどる

増築住宅を調べるとき、非常に重要になるのが時系列です。「増築されています」という情報だけでは、建築確認の要否や登記の状況を十分に判断できません。何年頃に、誰が所有していたときに、どの部分を、どの程度工事したのかを可能な範囲で確認します。

売主本人が工事したのであれば、当時の工事請負契約書、見積書、図面、領収書、工事写真などが残っていないかを探します。確認済証、検査済証、建築計画概要書などが見つかることもあります。所有者が相続した住宅なら、親族から「昔、子ども部屋として増やした」「台所を広げた」という話を聞ける場合もあります。古い写真を見て、ある時期から建物の外観が変わっていることが分かることもあります。

増築住宅では、資料が完全にそろわなくても、工事時期・工事場所・工事内容について確認できる事実を積み重ねることで、その後の登記・建築調査を進めやすくなります。

ただし、家族の記憶は参考情報であって、それだけで法的な事実を確定するものではありません。「昭和の終わり頃だったと思う」「近所の大工さんにつくってもらったらしい」という話であれば、その程度の確度で扱います。売買契約時にも記憶上の情報を確定事項のように説明しないことが重要です。

実務上よくあるのは、建築当初の確認済証はあるものの、その図面と現在の間取りが一致しないケースです。その場合、建築後に何らかの変更や増築が行われた可能性を検討します。建築当初の資料と現在の姿を比較することで初めて分かることも多いため、築年数の古い戸建住宅では現地・登記・建築資料を三方向から見る必要があります。

 

 

 

 

 

 

第2章:増築部分の建築確認と現在の法令上の扱いをどう調べるか

 

2-1. 建築確認が必要だった増築かどうかを確認する

増築されたことが分かったら、次に確認したいのが建築基準法上の手続きです。住宅の増築は建築行為に当たり、一定の場合には工事へ着手する前に建築確認を受ける必要があります。現在の福岡市の案内でも、建物の新築・増築・改築・移転などについて、対象となる工事では着工前の建築確認が必要とされています。

よく知られているのが「10㎡以内なら確認申請はいらない」という話ですが、これは条件を省略すると誤解を生みます。防火地域・準防火地域以外で一定の増築等を行う場合に10㎡以内という例外が設けられているもので、防火地域や準防火地域では同じ扱いにはなりません。また、確認申請が不要な増築であっても、建ぺい率や容積率などの規定へ適合する必要があります。福岡市もこの点を明確に案内しています。

「10㎡以内だから問題ない」と考えるのではなく、その増築が行われた時点・地域・規模において建築確認が必要だったかを個別に確認することが必要です。

また、2025年4月には建築基準法改正による建築確認・検査対象等の見直しが施行されています。木造戸建住宅に関する審査制度も見直されているため、今後新たに増築する場合と、何十年も前に行われた増築を調査する場合では考え方を分けなければなりません。現在の制度をそのまま過去の工事へ当てはめて結論を出すことは避ける必要があります。

売却に際しては、行政に建築確認関係の記録が残っているかを調査することがあります。建築計画概要書や確認台帳などから、当初の建物の規模や過去の増築確認を確認できる場合があります。ただし古い建物では保存資料に限界もあるため、確認できないこと自体と、確認申請をしていなかったことは分けて説明する必要があります。

 

2-2. 増築によって建ぺい率・容積率を超えていないか

増築による問題として見落とされやすいのが、建ぺい率と容積率です。建ぺい率は敷地面積に対する建築面積の割合、容積率は敷地面積に対する延べ面積の割合を制限するものです。当初は上限以内に建てられていた住宅でも、その後部屋を増築すると建築面積や延べ面積が増え、制限との関係が変わる可能性があります。

例えば、当初から建ぺい率の上限に近い住宅へ一階部分を増築すれば、増築後に上限を超える可能性があります。二階部分を広げれば容積率へ影響することがあります。さらに、敷地の一部を後から売却したなどの事情があると、現在の敷地面積を基準にした計算と当初建築時の状況が異なることもあります。

増築住宅では、増えた床面積そのものだけでなく、増築後の建物全体が敷地に対する建ぺい率・容積率などの制限とどのような関係にあるかを確認することが重要です。

また、現在の建ぺい率・容積率を超えているからといって、その理由を確認せず直ちに「違反建築」と判断することも適切ではありません。建築後に都市計画上の指定が変わり、現在の基準には合わないものの建築当時は適法だった「既存不適格」の可能性もあります。一方、増築行為そのものによって制限を超えたのであれば、別の整理が必要になります。

売却時には、この違いが購入者にとって大きな意味を持ちます。現在の建物を利用するだけでなく、将来建て替えや再増築を考えている買主にとっては、敷地上どの程度の建物を建築できるかが重要だからです。不動産価格も現在存在する建物の広さだけではなく、土地が本来どのように利用できるかという視点から評価されます。

 

2-3. 確認済証と検査済証は同じものではない

建築関係書類を探していると、「確認済証」と「検査済証」という二つの書類が出てくることがあります。確認済証は、着工前の建築計画について建築基準関係規定への適合が確認されたことを示す書類です。一方、検査済証は工事完了後の検査を経て交付されるもので、計画時と完成後という役割の違いがあります。福岡市も、建築確認後に工事を行い、工事完了後には完了検査を行う流れを案内しています。

増築住宅では、当初建築時の確認済証と検査済証はあるものの、増築部分についての資料が見つからないことがあります。逆に増築時の確認済証らしきものはあるが、その後の検査済証を確認できない場合もあります。どの建築行為について、どの書類が残っているのかを時系列で整理する必要があります。

「確認済証がある」というだけで現在の建物全体が確認済証の内容どおりとは限らないため、書類に記載された建物と現況を照合することが必要です。

福岡市は、確認済証や検査済証を確認できない建物について増築や用途変更を検討する場合には、監察指導課へ問い合わせるよう案内しています。古い建物では検査済証が残っていないこともあるため、書類の有無だけで売却可能・不可能を判断するのではなく、具体的な建物について行政や建築士等と整理することになります。

購入者側からすると、確認済証や検査済証の有無は住宅ローンや将来の改修計画を検討するときにも気になる情報です。売主側は「昔のことなので分からない」で終わらせるのではなく、手元資料を探し、行政で確認できる範囲を調査し、その結果として何が分かったかを説明できる状態にしておくことが望まれます。

 

2-4. 現在の建物を専門家に確認してもらう必要があるケース

不動産会社による調査で増築の可能性を把握できても、その構造上の安全性や建築基準法への詳細な適合性まで不動産会社だけで判断できるわけではありません。特に増築規模が大きい場合、確認申請関係書類が見つからない場合、建ぺい率・容積率への影響が疑われる場合、構造体へ手を加えている可能性がある場合などには、建築士等へ確認を依頼することが考えられます。

木造住宅では、壁を撤去して部屋を広げる工事や、二階を増築する工事が建物全体の構造へ影響することがあります。外から見て増築部分がきれいにつながっていても、どのように既存建物と接続されているかは分かりません。売却時の調査は建物の安全性を保証するための検査ではありませんが、購入者が判断するために必要な情報を整理するという意味で、専門的確認が有効になることがあります。

増築の適法性や構造について専門的な判断が必要な部分は、不動産会社だけで断定せず、建築士・土地家屋調査士・行政など役割の異なる専門家へつなぐことが適切です。

土地家屋調査士は主として建物の表示登記や現況測量を扱い、建築士は建築計画や構造、建築基準法上の検討を行います。行政は建築確認関係の記録や法令上の取り扱いについて確認先となります。それぞれの専門分野が異なるため、「一人の専門家に全部聞けばよい」と考えるより、問題を分けて確認する方が整理しやすくなります。

 

 

 

 

 

第3章:増築した住宅は売却価格や住宅ローンにどう影響するのか

 

3-1. 未登記部分があるだけで売れないわけではない

増築部分が登記されていないことが分かると、売主は「この家はもう売れないのではないか」と心配することがあります。しかし、未登記増築があるという理由だけで不動産売買そのものが一律にできなくなるわけではありません。問題は、その状態を把握したうえで、売買までにどのような手続きを行い、買主へどのような情報を提供するかです。

実務では、売却前または売買手続きの途中で建物表題部変更登記を行い、現況に合わせて登記を整えてから引き渡す方法があります。増築部分の内容や資料を確認したうえで、土地家屋調査士へ変更登記を依頼します。売買契約までに完了させる場合もあれば、契約条件として引渡しまでに登記を完了させる形を取ることも考えられます。

未登記増築が見つかった場合に重要なのは、「未登記だから売れない」と考えることではなく、売却前に登記を整えられるのか、ほかに建築上の問題がないのかを順番に確認することです。

ただし、登記を変更すればすべて解決するわけではありません。建物表題部変更登記によって現況と登記面積を合わせることと、建築基準法上の問題を解消することは別です。仮に確認申請が必要だった増築について手続き上の問題があれば、登記が現況と一致しても建築上の論点は残ります。

この点を売主が理解していることは重要です。「土地家屋調査士に登記してもらったので適法です」と説明してしまうと、登記と建築法規を混同することになります。登記は登記、建築確認は建築確認として、調査結果を分けて購入者へ示す方が正確です。

 

3-2. 住宅ローンでは建物の状況を確認されることがある

増築住宅を購入する人の多くは住宅ローンを利用します。その際、金融機関は土地・建物を担保として評価するため、登記事項証明書などの資料を確認します。現況の建物と登記上の建物が明らかに異なれば、未登記部分について確認や対応を求められることがあります。

金融機関ごとに審査基準は異なるため、「未登記増築があれば住宅ローンは絶対に利用できない」「○㎡までなら必ず融資される」と一律に言うことはできません。実務上は、融資実行までに変更登記を求められるケースや、増築部分の状況について追加資料が必要になるケースなどが考えられます。さらに建築上の問題がある場合には、担保評価や融資判断へ影響する可能性もあります。

売却物件に未登記増築がある場合、売主自身には支障がない状態でも、購入者の住宅ローン審査で初めて問題が表面化することがあります。

そのため売却を開始してから買主が決まり、住宅ローンの本審査段階になって初めて調べるのでは遅い場合があります。表題部変更登記には建物調査や書類準備が必要であり、内容によって一定の期間を要します。決済日が迫った状態で手続きを始めれば、取引スケジュールへ影響することがあります。

売主にとっては、自分が住宅ローンを完済しているかどうかだけではなく、「次に買う人が一般的な住宅ローンを使いやすい状態になっているか」という視点が必要です。購入者の選択肢を広く保てる状態にしておくことは、結果として販売のしやすさにも関係します。

 

3-3. 増築した面積がそのまま価格へ上乗せされるとは限らない

増築によって住宅が広くなっている場合、売主からすると「元は80㎡だったが、20㎡増築して100㎡あるのだから、その分高く評価されるはず」と考えたくなることがあります。確かに、生活上使える面積が増えていることは住宅の利便性へプラスに働くことがあります。子ども部屋が一室増えている、LDKが広くなっているなど、購入者にとって魅力になることもあります。

しかし、不動産価格は床面積だけで決まりません。増築部分の築年数、施工状態、建物全体とのつながり、登記の状況、建築上の手続き、将来の修繕性などを合わせて評価します。増築部分について資料がなく、建築上の状況も確認できない場合には、その不確実性を購入者がリスクとして見る可能性があります。

増築部分の市場価値は「何㎡広くなったか」だけではなく、その空間を購入者が安心して利用・維持できる状態かによって変わります。

例えば、丁寧に増築され、建物全体との動線もよく、登記や建築資料も整理されている一室であれば、中古住宅として魅力になる可能性があります。一方、床に段差があり、雨漏り跡があり、いつ誰が工事したか分からず、登記もされていないとなれば、同じ面積でも評価は異なります。

福岡県内でも中古戸建住宅の評価は地域によって異なります。福岡市やその近郊で土地需要が高い地域では、建物より土地価値を中心に検討する購入者もいます。一方、郊外では建物をそのまま利用できるかどうかが購入判断に大きく影響する場合があります。九州圏でも土地価格と建物価格のバランスは地域によって異なるため、「増築したから○万円高い」と機械的に価格へ反映することはできません。

 

3-4. 増築部分を解体して売る方がよいケースもある

増築部分に問題が見つかった場合、必ず現状のまま活用することだけが選択肢ではありません。増築部分を撤去し、元の建物に近い状態へ戻して売却する方法を検討するケースもあります。特に簡易的な増築で状態が悪い場合や、土地としての売却を予定している場合には、残すメリットと撤去費用を比較します。

ただし「未登記だから壊せばよい」と単純に判断するものでもありません。増築部分を撤去することで外壁や屋根の補修が必要になることがありますし、建物本体との接続状況によって工事が大きくなることもあります。また、撤去後には建物の登記や固定資産税関係について整理が必要になる場合があります。

増築部分を残すか撤去するかは、法的な整理だけでなく、工事費、建物の利用価値、土地価格、購入者層を含めた売却全体の判断として考える必要があります。

実務上想定される例として、築年数の古い住宅へ後から小さな洋室が増築されているものの、増築部分の施工資料が残っておらず、建物全体も将来的には建て替えを前提に評価されるケースがあります。このような物件では、高額な補修を行って増築部分を残しても売却価格へ十分反映されない可能性があります。反対に、建物を中古住宅として利用する需要が見込める地域なら、登記や状態を整理して残した方が住宅としての魅力を維持できることもあります。

売却前に大きな工事を行う場合には、工事費をそのまま売却価格へ上乗せできるとは考えない方がよいでしょう。まず現況での市場評価を把握し、増築を整理した場合にどの程度販売条件が変わるのかを比較してから判断することが現実的です。

 

 

 

 

 

第4章:増築住宅を売却する前にどこまで整理すればよいのか

 

4-1. 最初に「現在の建物」を正確に把握する

増築住宅の売却で最初に行いたいのは、過去の工事について推測することではなく、現在そこにどのような建物が存在するのかを把握することです。登記事項証明書、建物図面、各階平面図などを取得し、現地の外観や間取りと比較します。売主から増築した場所を聞き取るだけでなく、登記図面との違いを確認します。

次に、固定資産税の課税明細や家屋評価関係資料、建築当初の確認済証・検査済証、設計図書などを確認します。工事契約書、増築時の見積書、リフォーム会社の資料が残っていれば、それも手掛かりになります。築年数の古い住宅では資料が完全にそろわないこともありますが、まず存在するものを集めることで調査の方向性が見えてきます。

増築住宅の売却では、「増築したらしい」という曖昧な状態から販売を始めるのではなく、登記と現況のどこが違うのかを具体的に把握することが第一歩です。

例えば一階西側の六畳程度の洋室が後から追加されているのか、二階全体が広げられているのかでは、調査内容も異なります。増築ではなく単なる間取り変更だったというケースもあります。反対に売主が増築と思っていなかった部分が、登記図面には存在していないこともあります。

この初期調査ができていれば、その後に土地家屋調査士へ何を確認してもらうか、行政へ何を照会するか、建築士による確認が必要かを判断できます。専門家へ相談するときにも「よく分からないので全部調べてください」という状態より、疑問点が整理されている方が手続きは進めやすくなります。

 

4-2. 売却前に変更登記を済ませるかを検討する

現況と登記の違いが増築によるもので、建物表題部変更登記が必要と判断される場合には、売却前に登記を整えることを検討します。法律上も、表題部の一定事項に変更が生じた場合には原則として1か月以内の変更登記が求められています。長期間そのままになっていた場合でも、売却を機に現況へ合わせることができます。

売却前に登記を整えるメリットは、購入希望者へ建物の面積を明確に説明しやすくなることです。住宅ローンを利用する購入者についても、現況と登記の大きな違いを残したまま審査するより、事前に整理できる事項を済ませておく方が取引を進めやすい場合があります。また、広告上の建物面積についても根拠を示しやすくなります。

変更登記が必要な増築であれば、購入者が決まってから対応するより、販売開始前または早い段階で手続きを検討する方が取引条件を整理しやすくなります。

もっとも、売主が必ず販売開始前にすべての登記手続きを終えなければならないという意味ではありません。建物を解体して土地として引き渡す予定の場合や、取引条件によっては別の進め方も考えられます。物件ごとに売却方法が異なるため、費用や期間を踏まえて判断します。

登記費用についても、増築面積だけで一律に決まるものではありません。資料の有無、建物の形状、調査内容などによって変わります。売却査定を受けた段階で増築が疑われるのであれば、早めに土地家屋調査士へ相談し、必要な手続きと概算費用を把握しておくと売却計画を立てやすくなります。

 

4-3. 買主へは「確認できたこと」と「確認できないこと」を分けて伝える

増築住宅を売却するとき、売主側が最も避けたいのは、不確かな事項を「問題ありません」と断定してしまうことです。数十年前の増築で資料が残っていなければ、当時の施工状況まで完全に把握することは難しい場合があります。そのようなときに必要なのは、すべてを証明することではなく、調査した範囲とその結果を正確に伝えることです。

例えば、「増築部分について表題部変更登記を行った」「行政で増築時の確認記録を確認できた」「増築時期は売主の記憶ではおおむねこの頃だが資料は残っていない」「検査済証は確認できていない」といったように、確認レベルを分けます。分からない事項を曖昧な表現で安全だと説明するより、購入者自身が判断できる情報を提示する方が取引上は適切です。

増築住宅の説明では、売主が安全性や適法性を安易に保証するのではなく、確認できた事実・確認できなかった事項・専門家の調査結果を区別して伝えることが重要です。

これは買主を不安にさせるためではありません。むしろ情報を整理して説明することで、「何が問題なのか分からない増築住宅」から「確認状況を理解したうえで判断できる住宅」へ変わります。購入者が建築士へ相談したいのであれば、その判断材料にもなります。

契約書や重要事項説明書等への記載方法についても、個別の調査結果に合わせて整理することになります。単に「未登記部分あり」という一文だけでなく、その範囲や売主がどのような対応を行うのかを明確にすることで、引渡し後の認識違いを減らせます。

 

4-4. 増築住宅ほど「売る前の調査」が価格交渉を減らす

一般的な住宅でも売却前調査は重要ですが、増築住宅では特にその意味が大きくなります。何も調べずに販売を始めれば、購入希望者が見つかった後で建築会社や金融機関から増築について指摘される可能性があります。その段階で初めて未登記、確認資料不足、建ぺい率の問題などが判明すると、購入者としては当初想定していなかったリスクを抱えることになります。

そうなると、価格を下げてほしい、売主側で登記を済ませてほしい、専門家による確認をしてほしいといった条件交渉につながりやすくなります。場合によっては住宅ローンの審査スケジュールに間に合わず、契約そのものが難しくなることもあります。問題そのものより、「契約直前まで分からなかったこと」が取引へ大きく影響することがあります。

増築住宅では、問題がないことを証明するためだけではなく、購入者が後から知る情報をできるだけ減らすために売却前調査を行うという考え方が有効です。

例えば、販売前に未登記部分が判明し、変更登記を完了したうえで、増築時の建築確認についても行政調査の結果を整理できていれば、購入者には最初からその前提で物件を検討してもらえます。価格もその条件を踏まえて設定できます。調査の結果、不明点が残ったとしても、それを最初から開示して販売するのと、契約直前に判明するのとでは意味が違います。

福岡県内には、昭和から平成初期に建てられ、その後家族構成に合わせて増築された戸建住宅が数多くあります。築年数が古いから価値がないわけでも、増築しているから売れないわけでもありません。ただし新築住宅と比べれば、建物の履歴を一つずつ確認する必要があります。その手間を売却前にかけることが、結果として価格設定や買主との交渉を落ち着いて進める土台になります。

 

 

 

 

 

まとめ

増築した住宅を売却するとき、登記事項証明書と実際の建物が違っていることは、それほど特殊なケースではありません。築年数の経過した戸建住宅では、家族が増えた時期に一部屋を増やしたり、生活スタイルに合わせて住宅を拡張したりしていることがあります。所有者にとっては何十年も使ってきた普通の一室でも、不動産売買ではその部分がいつ、どのようにつくられ、登記や建築関係の手続きがどうなっているのかを確認する必要があります。

ここで混同してはいけないのが、不動産登記と建築基準法上の手続きです。建物の床面積などに変更が生じれば、不動産登記法上は建物表題部変更登記の対象になる場合があります。一方、建築確認は増築時の建築計画が建築基準関係規定へ適合しているかを確認する制度です。登記されていないから建築基準法違反と決まるわけではなく、登記を現況へ合わせたから建築上の問題まで解消されるわけでもありません。

増築住宅を正しく理解するためには、「現況の建物」「法務局の登記」「建築確認などの建築関係資料」という三つを重ねて確認する必要があります。

 

売却を検討する段階では、まず登記事項証明書や建物図面を取得し、現在の建物と比較します。増築の可能性があれば、所有者の記憶だけでなく、固定資産税資料、建築確認関係書類、工事契約書、設計図、古い写真などを探します。登記の変更が必要か判断できなければ土地家屋調査士へ、建築上の適合性について専門的判断が必要であれば建築士や行政へ確認します。

増築部分が未登記だったとしても、それだけで売却できなくなるわけではありません。必要に応じて建物表題部変更登記を行い、現況に合わせて登記を整理したうえで販売することができます。ただし、登記手続きを済ませることと建築基準法上の問題を確認することは別であるため、片方だけで調査を終わらせないことが重要です。

また、建築確認については「10㎡以内なら何をしても大丈夫」という理解は適切ではありません。現在でも防火地域・準防火地域外の一定の10㎡以内の増築等には確認申請の例外がありますが、建ぺい率、容積率その他の建築基準法上の規定へ適合する必要はあります。さらに古い増築については、増築当時の法令や地域指定を確認しなければならないため、現在の制度だけから過去の工事を断定しないことも大切です。

売主にとってもう一つ意識したいのが、購入者の住宅ローンです。自分たちは何十年も問題なく住んできたとしても、次の購入者が金融機関から融資を受ける際には登記と現況の違いが確認されることがあります。買主が決まってから慌てて登記を変更するのではなく、売却前の段階で確認しておけば、取引スケジュールを組みやすくなります。

価格についても、増築した面積がそのまま資産価値として上乗せされるわけではありません。広い一室が増えていることは住宅として魅力になることがありますが、施工状態、築年数、資料の有無、登記状況、建築上の取り扱いなどを含めて市場から評価されます。場合によっては増築部分を残すより撤去した方が売りやすいこともあり、土地価格や購入者層を踏まえて判断する必要があります。

増築住宅の売却で目指したいのは、すべてを無理に「問題なし」にすることではなく、何が確認でき、何が確認できず、売主としてどこまで整理して引き渡すのかを明確にすることです。

築40年、50年の住宅であれば、すべての工事資料が残っていないこともあります。昔の増築について当時の施工者へ確認できないこともあるでしょう。それでも、登記を調べ、行政記録を確認し、現地を見て、必要な専門家へ相談することで、分からない範囲を小さくすることはできます。

 

買主側にとっても、「増築しているから購入しない」という判断だけが正解ではありません。登記や建築上の状況が整理され、建物状態にも問題がなく、自分たちの利用目的に合っていれば、増築によって広くなった住宅が魅力的な選択肢になることもあります。反対に、購入後の改修や建て替えへ大きな制約が生じる可能性があるなら、そのリスクを価格と合わせて判断する必要があります。

不動産売買では、建物が登記事項証明書の数字だけで存在しているわけではありません。長い年月の中で増築され、修繕され、家族の生活に合わせて姿を変えている住宅があります。だからこそ売却するときには、現在の建物を起点として過去の履歴をたどり、登記と建築の二つの制度を混同せず整理することが必要です。その準備ができていれば、増築した住宅であっても、買主が状況を理解したうえで判断できる不動産として市場へ出すことができます。


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