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未登記建物とは?登記されていない建物を売買するときの注意点

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未登記建物とは?登記されていない建物を売買するときの注意点

未登記建物とは?登記されていない建物を売買するときの注意点

2026/09/09

はじめに

中古住宅や相続した実家の売却相談では、土地については登記事項証明書を取得できるのに、敷地に建っている住宅や倉庫の登記が見当たらないことがあります。所有者としては固定資産税を毎年支払っており、長年自分たちの建物として利用してきたため、「登記されていない」と聞いて初めてその事実を知ることも珍しくありません。また、母屋は登記されているものの、後から建てた離れや倉庫だけが登記されていないケースや、増築した部分が登記へ反映されていないケースもあります。

ここで注意したいのは、「固定資産税を払っている建物だから登記もされているはず」とは限らないことです。固定資産税を課税するために自治体が把握している家屋の情報と、法務局が管理している不動産登記は別の制度です。実際に福岡市でも、家屋の固定資産税については登記簿だけでなく家屋補充課税台帳に登録された所有者が納税義務者となる仕組みがあり、未登記の新築や増築についても課税のための調査対象となる場合があります。つまり、固定資産税が課税されているという事実だけでは、法務局に建物の登記が存在することの証明にはなりません。

さらに、「未登記なら売れないのではないか」と考える人もいますが、問題はそれほど単純ではありません。未登記建物が存在する不動産では、誰が建物を所有しているのか、どのような経緯で建築されたのか、買主が住宅ローンを利用するのか、建物を残して利用するのか、売買前に登記を整える必要があるのかなど、複数の事情を整理して取引方法を決めることになります。

未登記建物の売買で最初に確認すべきなのは、「登記がないから売れる・売れない」と結論を急ぐことではなく、現地にある建物と登記・税務・所有関係を照合し、何が未登記なのかを正確に把握することです。

福岡県内や九州圏には、建築から長い年月が経過した戸建住宅、農家住宅、離れ、納屋、倉庫などが残る地域もあります。相続をきっかけに調査したところ、何十年も家族が利用してきた建物が未登記だったと分かることもあります。こうした住宅を売却するときには、現在の状態だけを見るのではなく、建物ができた経緯や所有権の流れまで確認しなければならない場合があります。未登記建物とは何なのか、登記済みの建物と何が違うのか、売主・買主はどこを確認すればよいのかを、実際の不動産取引の流れに沿って考えていきます。

 

 

 

 

 

 

第1章:未登記建物とはどのような状態なのか

 

1-1. 建物の登記には「表題部」と「権利部」がある

建物の登記を理解するには、まず登記記録がどのような構成になっているかを知っておく必要があります。不動産の登記記録は、土地や建物ごとに作成され、大きく「表題部」と「権利部」に分かれています。建物の表題部には所在、家屋番号、種類、構造、床面積など、その建物がどのような不動産なのかを特定するための情報が記録されます。権利部には所有権や抵当権など、建物に関する権利関係が記録されます。

新築した建物について最初に行うのが建物表題登記です。これによって、それまで法務局の登記記録に存在していなかった建物が、一つの不動産として登記上認識されることになります。その後、必要に応じて所有権保存登記を行い、所有権に関する登記記録を整えていきます。一般の人が「建物が登記されている」と考えるときには、この二つをまとめてイメージしていることが多いのですが、実務では表題登記の有無と所有権の登記の有無を分けて確認します。

一般に「未登記建物」と呼ばれるものを調べるときには、単に所有者の名前が登記されていないという意味なのか、そもそも建物表題登記自体が存在していないのかを区別する必要があります。

例えば、建物表題登記は存在しているものの所有権保存登記がされていない建物と、建物そのものが法務局の登記記録に現れてこない建物では、整理すべき内容が違います。また、母屋は登記されていても、敷地内に後から建てられた離れや倉庫が登記されていない場合もあります。さらに、建物自体は登記されていても、増築した部分が表題部へ反映されておらず、登記上の床面積と現況が異なるケースもあります。

そのため、売却相談で「この建物は未登記です」と言われたときには、その言葉だけで判断しない方がよいでしょう。まず登記事項証明書や登記情報を確認し、現地にある建物と照合します。敷地内に複数の建物がある場合には、どの建物に登記があり、どの建物に登記がないのかを一棟ずつ確認することが、その後の調査の出発点になります。

 

1-2. 固定資産税を払っていても登記されているとは限らない

未登記建物の相談で特に多い疑問が、「毎年固定資産税を払っているのに、なぜ未登記なのか」というものです。所有者からすると、自治体から納税通知書が届き、家屋について税金を支払っている以上、行政が建物を正式に把握しているのだから法務局にも当然登録されているように感じます。しかし、固定資産税の課税と不動産登記は目的も管理主体も異なります。

福岡市では、固定資産税の家屋の納税義務者について、登記簿または家屋補充課税台帳に所有者として登記・登録されている人を基本としています。また、未登記の新築や増築についても、工事内容によって課税対象となる場合があり、固定資産税の評価のため現地調査が行われることがあります。したがって、法務局に表題登記がない建物であっても、自治体側では家屋として把握され、固定資産税が課税されていることがあります。

固定資産税の課税資料に建物が載っていることと、法務局に建物表題登記が存在することは別の問題であり、どちらか一方を確認しただけでは建物の登記状態を判断できません。

売却時には、固定資産税の課税明細書と登記事項証明書を並べて確認すると違いに気づくことがあります。課税明細書には住宅や附属建物が記載されているのに、法務局で確認すると該当する建物が見当たらないことがあります。反対に、登記された建物の床面積と課税資料の床面積が異なることもあります。床面積の算定方法や増築履歴など、別の理由による差異も考えられるため、数字が違うというだけで直ちに原因を断定することはできません。

特に相続した実家では、現在の所有者が建築当時の事情を知らないことがあります。親や祖父母の代から固定資産税を支払い続けていたため、登記も当然済んでいると思っていたところ、売却のため登記を調べて初めて未登記だと判明することがあります。これは珍しい仕組みではなく、税務上把握されていることと登記上整理されていることを別々に確認する必要があるということです。

 

1-3. 母屋だけでなく離れ・倉庫・車庫が未登記の場合もある

未登記建物というと、一戸建て住宅一棟が丸ごと登記されていない状態を想像しがちですが、実際には敷地内の一部の建物だけが未登記というケースもあります。例えば、住宅の母屋については建築時に登記を行ったものの、その後に建てた離れ、物置、倉庫、車庫などについて登記手続きをしていない場合です。古くから利用されてきた敷地ほど、建物が何度か追加・改築されていることがあります。

福岡県内でも、福岡市中心部のように比較的敷地が限られた住宅地と、都市近郊や郊外の広い敷地では建物の構成が異なります。郊外では母屋のほかに倉庫、農作業用の建物、離れなどが存在する住宅もあり、九州圏の農村部ではさらに複数棟が一つの敷地に建っていることもあります。売却時には「家の登記があるから問題ない」と考えるのではなく、現地に存在する建物と登記記録を一つずつ照合する視点が必要です。

敷地内に複数の建物がある不動産では、母屋の登記だけを確認して終わらせず、現地に存在する離れ・倉庫・車庫などについても登記の有無を確認することが必要です。

ただし、敷地内に屋根のある構造物が存在すれば、すべてが必ず独立した建物として登記されるとは限りません。不動産登記上の建物として認められるかどうかは、その構造や土地への定着性、用途などを踏まえて判断されます。簡易な物置やカーポートなどについて、一般の人が外観だけで登記対象かどうかを判断することは難しいため、必要な場合には土地家屋調査士へ確認することになります。

また、未登記の附属建物が見つかったからといって、直ちに取引全体ができなくなるわけではありません。売却前に登記を整えるのか、建物を撤去する予定なのか、買主がどのように利用するのかなどによって対応は変わります。重要なのは、契約後に初めて存在が問題になるのではなく、販売前または購入条件を決める段階で把握しておくことです。

 

1-4. 未登記建物と「増築部分の未登記」は分けて考える

もう一つ混同されやすいのが、建物全体が未登記であるケースと、登記された建物に未登記の増築部分が存在するケースです。例えば、登記上は木造2階建て、床面積80㎡の住宅であるものの、実際には後から1階部分を増築して100㎡程度になっているような場合があります。この場合、元の住宅には建物登記が存在しているため、「建物一棟が未登記」という状態とは異なります。

増築によって床面積や構造など登記された事項に変更が生じた場合には、建物表題部の変更登記を検討することになります。一方、建物全体が未登記であれば、最初に建物を登記記録へ載せるための表題登記から整理する必要があります。同じ「登記と現況が合わない」という問題でも、必要となる資料や調査内容が異なるため、最初の分類が重要です。

建物全体の未登記と未登記増築は同じ問題ではなく、「登記記録そのものがないのか」「登記はあるが現況と一致していないのか」を最初に切り分けることが実務上の基本になります。

さらに、登記とは別に建築基準法上の確認も必要になる場合があります。登記を行ったからといって建築基準法上の問題が自動的に解決するわけではなく、反対に建築確認等の手続きが行われていた建物でも登記が整っていないことがあります。登記制度と建築行政は目的の異なる制度であるため、未登記建物を調査するときには両者を混同しないことが必要です。

 

 

 

 

 

第2章:未登記建物を売却する前に何を調べればよいのか

 

2-1. まず土地と建物の登記記録を現況と照合する

未登記建物が疑われる物件では、最初から登記手続きを始めるのではなく、まず現在の不動産がどのような状態なのかを確認します。土地の登記事項証明書、建物の登記事項証明書、固定資産税の課税資料、現地の建物配置などを照合し、登記されている不動産と実際に存在する不動産を整理します。土地については登記があるものの建物が見つからないのか、母屋だけ登記されているのか、所有者名義が昔のままなのかなど、問題の種類を切り分けます。

ここで役立つのが固定資産税の課税明細書などです。法務局の登記記録だけでは把握できない未登記家屋が、自治体の課税資料には記載されている場合があります。ただし、課税資料に記載された床面積や構造を、そのまま登記上の情報として扱うことはできません。課税と登記は別制度であるため、それぞれを手掛かりとして利用しながら現況を確認します。

未登記建物の調査では、一つの書類だけで判断するのではなく、「法務局の登記」「自治体の課税資料」「現地にある建物」の三つを照合することで全体像を把握することが重要です。

現地では、建物の位置や形状だけでなく、母屋と附属建物の関係も確認します。課税明細書に複数の家屋が記載されている場合には、それぞれが現地のどの建物に対応しているのかを確認します。古い住宅では、課税資料上は存在する建物がすでに取り壊されていたり、反対に後から建てた建物が追加されていたりすることもあります。

こうした確認を行うことで、「未登記住宅が一棟ある」という漠然とした状態から、「母屋全体が未登記」「倉庫だけ未登記」「増築部分だけ登記未反映」という具体的な状態へ整理できます。その段階になって初めて、売却前にどのような手続きが必要なのかを専門家と検討しやすくなります。

 

2-2. 誰が建て、誰が所有してきた建物なのかを確認する

未登記建物では、登記記録から現在の所有者を確認できないことが大きな特徴です。通常の登記済み不動産であれば、所有権に関する登記から現在の名義人や過去の権利移転を確認できます。しかし建物そのものに登記がなければ、登記事項証明書だけを見ても誰の建物なのかを確認することができません。

そこで、建築時の資料、固定資産税関係資料、建築確認関係資料、工事契約書、領収書、相続関係書類など、所有関係を確認するための資料を集めることになります。何十年も前に建築された住宅では資料が残っていないこともありますが、その場合でも現在までの所有経緯をできる範囲でたどります。特に相続した住宅では、建物を建てた祖父母から親、そして現在の相続人へどのように承継されてきたのかを整理する必要があります。

未登記建物では登記記録だけで所有者を証明できないため、売却前に「誰が建築し、どのような経緯で現在の所有者へ承継されたのか」を確認することが重要な調査になります。

例えば、土地は父親名義で登記されているものの、敷地上の未登記住宅は祖父が建築したというケースでは、土地の名義だけを見て建物も父親の所有だと決めつけることはできません。祖父の相続関係を確認する必要が生じる可能性があります。相続人が複数存在すれば、建物について誰が権利を持っているのかを整理しなければ、売買契約を安全に進めにくくなります。

2024年4月から相続登記の申請が義務化され、登記済み不動産については相続による所有権取得を知った日から一定期間内に申請する制度が始まっています。一方、そもそも建物表題登記がない建物では、まず建物自体の登記をどう整理するかという問題があります。相続した土地の名義変更だけを終えたからといって、敷地上の未登記建物まで自動的に整理されるわけではありません。

 

2-3. 建築時期や建築関係資料も確認しておく

未登記建物の調査は、法務局の登記だけで完結するものではありません。売却する建物を買主が住宅として利用するのであれば、建築時期、構造、増改築の有無、建築確認関係資料なども重要になります。登記がないという事実と、建築基準法上どのような状態にあるかという問題は別ですが、購入者から見ればどちらも「この建物を安心して利用できるか」を判断するための情報です。

築年数の古い住宅では、確認済証や検査済証、設計図書などが所有者の手元に残っていないことがあります。資料がないから直ちに違法建築と判断することはできませんが、確認できない事項が増えることは事実です。自治体側に記録が残っている可能性もあるため、必要に応じて行政窓口や建築士などへ確認することになります。

未登記であることと建築基準法上の適法性は別の問題であり、建物を利用する前提の売買では、登記調査と建築関係の調査を分けて進める必要があります。

また、築年数の古い住宅では建築後に増築や改修が行われていることがあります。建築当初の資料が見つかったとしても、現在の建物がその資料どおりとは限りません。現地を確認し、増築された形跡や間取り変更などがあれば、その時期や内容をできる範囲で確認します。未登記建物の問題に増築未登記が重なっていることもあるためです。

買主が建物を解体する予定で土地として購入する場合には、住宅として継続利用するケースとは調査の重点が変わります。それでも、誰の所有する建物を誰が撤去するのかは明確にする必要があります。建物を使わないから登記や所有関係を確認しなくてよいということではなく、利用目的に応じて必要な調査の深さを調整するという考え方になります。

 

2-4. 土地家屋調査士・司法書士などの役割を分けて考える

未登記建物が見つかったとき、どの専門家へ相談すればよいのか分からないという人も少なくありません。不動産登記には、建物の物理的な状況を登記する「表示に関する登記」と、所有権などの権利に関する登記があります。建物表題登記など表示に関する登記については土地家屋調査士が専門家となり、所有権保存登記や所有権移転登記など権利に関する登記は司法書士が取り扱う分野になります。

不動産会社は、売却にあたって登記と現況の違いを確認し、取引上どの部分を整理する必要があるかを把握する役割を担います。しかし、建物の測量や表題登記の専門的判断、相続関係を踏まえた権利登記などについては、それぞれの専門家へつなぐ必要があります。建築基準法上の確認が必要であれば、さらに建築士や行政が関係することもあります。

未登記建物は一人の専門家だけですべてを処理する問題ではなく、「建物の表示」「所有権などの権利」「建築上の状態」「売買条件」を分け、それぞれの専門分野で確認することが合理的です。

実務上想定される例として、相続した戸建住宅の売却相談を受け、土地の登記は相続人名義になっているものの、住宅の登記が見つからないケースがあります。この場合、最初に現地と課税資料を確認し、土地家屋調査士へ表題登記に必要な資料や建物の状態を確認します。建物の所有関係について相続整理が必要であれば司法書士などと連携し、その結果を踏まえて販売時期や契約条件を決めていく流れが考えられます。

売却相談を受けた段階で「未登記だからすぐ登記してください」と一律に進めるのではなく、建物を残して売るのか、解体予定なのか、買主が融資を利用する可能性があるのかなどを確認したうえで順序を決める方が無駄がありません。未登記建物の整理では、登記手続きそのものだけでなく、最終的な不動産取引から逆算して必要な作業を組み立てることが重要になります。

 

 

 

 

 

 

第3章:未登記建物は売却価格や住宅ローンにどう影響するのか

 

3-1. 未登記だから価値がゼロになるわけではない

未登記建物があると、「建物の価値はゼロになりますか」と聞かれることがあります。しかし、不動産の市場価値と登記の有無を単純に同一視することはできません。購入者が実際にその建物を住宅として利用できる状態で、立地や築年数、維持管理状況などに魅力があれば、建物そのものに利用価値を感じる買主が現れる可能性があります。

一方で、登記が整っていないことによって取引手続きが複雑になれば、購入希望者が慎重になることは考えられます。誰の所有なのかが明確でない、床面積や構造を登記記録で確認できない、住宅ローン利用時の金融機関との調整が必要になるなど、一般的な登記済み住宅より確認事項が増えるためです。価格への影響は「未登記だから一律に何%下がる」というものではなく、未登記によって購入者にどのような負担や不確実性が生じるかによって変わります。

未登記建物の価格を考えるときには、登記の有無だけで機械的に減額するのではなく、建物の利用価値と、未登記状態を解消するために必要な費用・時間・取引上の制約を分けて評価する必要があります。

例えば、売主側で売却前に表題登記など必要な手続きを完了できるのであれば、購入者は登記が整った状態で検討できます。この場合、販売開始時点では未登記だったとしても、最終的な取引条件への影響を小さくできる可能性があります。反対に、所有関係が複雑で登記整理に時間がかかる場合には、購入者が待てるかどうかも売却条件へ影響します。

福岡市やその近郊のように中古戸建住宅を建物利用目的で購入する層が見込まれる地域では、建物を残して売るのであれば、登記を整えることが販売上の安心材料になりやすいでしょう。一方、九州圏の郊外などで築古住宅が土地中心に評価される物件では、建物を残して登記を整える費用と、解体を前提として売却する場合の条件を比較することもあります。地域だけで決まるわけではありませんが、想定する購入者によって未登記建物への向き合い方は変わります。

 

3-2. 住宅ローンを利用する買主では早めの確認が必要になる

現金で購入する取引と住宅ローンを利用する取引では、未登記建物が与える影響が異なる場合があります。住宅ローンでは、金融機関が購入する土地・建物を担保として評価し、必要に応じて抵当権を設定します。そのため、敷地上に登記されていない住宅が存在する場合には、金融機関から登記の整理を求められることがあります。

ただし、具体的な審査基準や必要書類は金融機関、商品、物件によって異なるため、「未登記建物は住宅ローンを利用できない」と一律に断定することはできません。重要なのは、購入者が住宅ローンを利用する可能性があるなら、契約直前まで未登記であることを放置しないことです。売買契約後に金融機関から登記手続きを求められれば、融資承認や決済予定へ影響する可能性があります。

住宅ローンを利用する可能性のある中古住宅では、未登記建物の存在を販売前または早い段階で把握し、必要となる登記手続きを確認しておくことが取引日程を守るうえで有効です。

買主側も、価格や室内状態だけを見て購入を決めるのではなく、登記事項証明書と現地の建物が一致しているかを確認する視点を持つとよいでしょう。住宅ローンの事前審査が通ったとしても、それだけで対象不動産のすべての登記問題が解決したことにはなりません。物件が決まった段階で、金融機関へ正確な物件資料を提示して確認する必要があります。

売主から見ると、自分は住宅ローンを完済している、あるいは現金で建築したため、これまで未登記でも生活上困らなかったということがあります。しかし、次の買主は住宅ローンを利用するかもしれません。不動産売却では、現在の所有者に問題がなかったかだけではなく、「次の所有者が取得する際にどのような手続きが必要になるか」という視点が欠かせません。

 

3-3. 建物を残して売るのか土地として売るのかで判断が変わる

未登記建物の対応を考えるときには、最終的にその建物をどうするのかを考える必要があります。建物状態が良く、購入者が中古住宅として利用することを想定するのであれば、登記を整えて建物の所在・種類・構造・床面積などを明確にして販売することには意味があります。購入者にとっても、取得する不動産の内容が登記上確認できる方が判断しやすくなります。

一方、老朽化が進み、購入者が取得後すぐに建物を解体することが想定される物件では、事情が異なります。売主が費用をかけて未登記建物を登記し、その直後に買主が解体して滅失させるのであれば、その手続きが取引全体として合理的なのかを検討する必要があります。ただし、未登記だから何もしないまま売ればよいという意味ではなく、建物の所有関係や解体責任、契約上の扱いを明確にする必要があります。

未登記建物への対応は「必ず登記してから売る」という一つの方法だけで考えるのではなく、建物を継続利用するのか、解体するのかという売却方針から逆算して決めることが必要です。

例えば、不動産取引でよく想定されるのが、郊外の広い土地に築年数の古い未登記住宅と倉庫が残っているケースです。建物として販売する場合には、登記や建築関係を整理して住宅としての情報を明確にする意味があります。一方、土地を探している事業者や新築目的の購入者が中心であれば、既存建物の登記費用、解体費用、残置物撤去費用を合わせて比較し、どの状態で市場へ出すのかを判断します。

福岡県内でも、福岡市やその近郊の住宅需要がある地域と、人口や住宅需要の状況が異なる郊外では、古家に対する市場の評価は同じではありません。建物を残せば必ず高く売れるわけでも、更地にすれば必ず売りやすくなるわけでもありません。未登記建物の整理に費用をかける前に、まず土地と建物が市場でどのように評価される可能性があるのかを把握することが必要です。

 

3-4. 登記費用だけでなく「売却までの時間」も考える

未登記建物を売却前に登記する場合、所有者が考えやすいのは手続きにかかる費用です。しかし、不動産売却では費用だけでなく、必要な資料を集め、現地調査を行い、登記を完了させるまでの時間も考える必要があります。特に建築時期が古く、所有関係が相続によって複雑になっている場合には、資料確認に時間を要する可能性があります。

売却を急いでいないのであれば、販売開始前に必要な調査を済ませておくことで、購入者が現れてから慌てる状況を避けやすくなります。反対に、相続税や住み替えなどの事情から売却期限を意識している場合には、登記整理に必要な期間を早めに把握することが重要です。買主が決まってから専門家へ相談し、想定より時間がかかると分かれば、契約や決済の日程を変更しなければならないことがあります。

未登記建物を売却するときの負担は登記費用だけではなく、資料収集、所有関係の確認、測量・調査、登記手続きに必要な期間まで含めて考える必要があります。

価格交渉との関係でも時間は無視できません。買主が未登記状態を承知したうえで購入を希望していても、売主側の登記完了を引渡し条件とするのであれば、完了時期が分からなければ買主も引越しや融資の予定を決めにくくなります。未登記そのものより、「いつ整理できるか分からない」という不確実性が購入判断へ影響する場合もあります。

売却前に専門家へ相談する意味は、単に登記申請を依頼することだけではありません。どの資料が必要なのか、どの程度の期間を見込むのか、売却活動と並行して進められるのかを把握することで、販売計画そのものを組み立てやすくなります。未登記建物がある物件ほど、価格設定だけではなくスケジュール設計まで含めて考える必要があります。

 

 

 

 

 

第4章:未登記建物を安全に売買するために売主・買主が確認したいこと

 

4-1. 売主は査定前に登記を完了させる必要があるとは限らない

未登記建物があると分かった売主の中には、「登記を済ませないと不動産会社へ査定を依頼できない」と考える人がいます。しかし、売却方法を検討する段階であれば、必ずしもすべての登記手続きを終えてから査定する必要はありません。むしろ、建物の市場価値や土地としての評価を確認し、どのような売却方法が適しているかを考えてから必要な手続きを決めた方が合理的な場合があります。

例えば、建物状態が良く、中古住宅として十分利用できるのであれば、建物を残して販売することを前提に登記整理を検討できます。一方、建物の老朽化が著しく、購入者の多くが土地として検討すると予想される場合には、登記費用だけでなく解体費用や測量費用なども含めて売却方法を比較することになります。最初から一つの手続きに決めつける必要はありません。

未登記建物がある場合でも、まず不動産全体の売却方針を確認し、その方針に合わせて「いつ、どこまで登記を整えるか」を決める方が、不要な費用や手戻りを避けやすくなります。

ただし、査定前に登記を済ませる必要がないことと、未登記であることを伏せて販売してよいことは全く別です。不動産会社が価格や販売方法を検討するためには、登記の状態を正確に把握する必要があります。売主が固定資産税の課税明細書、建築資料、相続資料などを持っている場合には、早い段階で提示した方が調査を進めやすくなります。

相続した住宅では、家族が「昔からこの家だから問題ない」と思っていても、売却調査で初めて登記の不一致が分かることがあります。その場合でも、慌てて手続きを始めるのではなく、土地・建物・所有関係を整理してから対応を決めればよいのです。売却前調査は問題を探すためだけではなく、最も合理的な売り方を選ぶための作業でもあります。

 

4-2. 買主は「登記する予定です」という説明だけで判断しない

未登記建物を購入する側では、売主から「引渡しまでには登記します」と説明されることがあります。その説明自体に問題があるわけではありませんが、買主としては、どのような登記を行う予定なのか、誰が費用を負担するのか、いつまでに完了するのかを確認する必要があります。特に住宅ローンを利用する場合には、金融機関が求める条件との整合性も確認します。

建物表題登記を行うには、建物の所在や種類、構造、床面積などを調査し、必要な資料を整えることになります。古い未登記住宅では、新築時の資料が十分に残っていない場合もあります。そのため、売主が登記する意思を持っていることと、希望する期日までに手続きが完了できることは同じではありません。

買主が未登記建物を購入するときには、「登記するかどうか」だけではなく、登記の内容・完了時期・費用負担・完了しなかった場合の取扱いまで契約前に確認することが重要です。

また、登記が完了すれば建物に関するすべての問題が解決するわけでもありません。建築関係資料、増改築履歴、建物状態、接道、用途地域など、通常の中古住宅購入で確認すべき事項は別に存在します。未登記という目立つ問題だけに注意が集中すると、それ以外の重要な調査が十分に行われないことがあります。

買主側では、「未登記だから危険」と一律に避ける必要も、「売主が登記すると言っているから大丈夫」と簡単に考える必要もありません。未登記となった経緯と、契約までにどこまで整理できるのかを確認し、そのうえで通常の不動産調査と合わせて購入判断をすることが適切です。

 

4-3. 契約書では未登記建物の扱いを曖昧にしない

未登記建物を含む不動産を売買する場合には、契約時にその存在を明確にする必要があります。土地だけが登記されているからといって、敷地上の住宅について何も触れずに契約を進めると、買主が何を取得する契約なのかが分かりにくくなります。未登記建物も売買の対象に含めるのか、売主が引渡し前に解体するのか、登記後に引き渡すのかなどを整理します。

売主が登記を行ってから引き渡す場合には、その手続きを売主の責任と費用で行うのか、どの段階まで完了させるのかを確認します。買主が未登記の状態を承知して取得する条件であれば、その後の登記手続きや費用についても理解しておく必要があります。物件によって条件は異なるため、定型的な一文だけで処理せず、実際の調査結果に合わせて契約内容を組み立てます。

未登記建物の売買では、未登記である事実を説明するだけでなく、「その建物を誰がどの状態で引き渡し、登記や撤去を誰が行うのか」を契約条件として具体化する必要があります。

不動産取引でよく見られるケースとして、売主・買主とも建物を解体する予定であることを理解していたものの、解体をどちらが行うかについて認識が一致していないという状況があります。売主は「古家付き土地としてそのまま渡す」と考え、買主は「更地で引き渡される」と思っていれば、未登記かどうか以前に大きな問題になります。登記状態、現況、契約上の引渡し状態を一致させることが必要です。

契約書や重要事項説明書に記載する内容については、個別物件の事実関係によって変わります。未登記であることだけを強調して買主を不安にさせるのではなく、確認できている事実、売主が行う手続き、買主が引き継ぐ事項を区別して説明することが大切です。分からないことを「問題ありません」と断定しないことも、専門家としての重要な姿勢になります。

 

4-4. 相続した未登記建物は早い段階で整理しておく

相続した不動産では、土地の相続登記に意識が向きやすい一方、敷地上の未登記建物が見落とされることがあります。法務局で土地の登記事項証明書を取得し、相続人名義へ変更したことで不動産全体の手続きが完了したように感じても、未登記建物は土地の相続登記によって自動的に登記されるものではありません。売却する段階になって初めて住宅の登記がないことに気づくケースもあります。

相続から時間が経つほど、建築時の事情を知る人が少なくなるという問題もあります。住宅を建てた祖父母が亡くなり、その子世代も高齢になれば、「誰が費用を出して建てたのか」「いつ頃建てたのか」「増築したのはいつか」といった情報を確認しにくくなります。古い契約書や領収書、設計図、写真なども処分されてしまう可能性があります。

相続した敷地に未登記建物がある場合には、すぐに売却する予定がなくても、建築経緯や所有関係を知る家族がいるうちに資料と情報を整理しておくことに大きな意味があります。

福岡県内でも、親が住んでいた実家を子が相続したものの、子は福岡市内や県外で生活しており、住宅を長期間空き家にするケースがあります。九州圏では実家と現在の居住地が離れていることもあり、売却を決めてから現地調査、家財整理、登記整理を同時に始めると負担が集中します。相続時に登記と課税資料、建物現況を一度確認しておけば、将来売却するときの準備がしやすくなります。

また、未登記建物があるからといって、必ずすぐに売却や解体を決める必要はありません。賃貸や自己利用、親族による利用などを検討する場合でも、所有関係を明確にしておくことには意味があります。建物が古くなり、次の世代へ相続されてから初めて問題を整理するより、現在確認できる情報を残しておく方が、将来の選択肢を持ちやすくなります。

 

 

 

 

 

 

 

まとめ

未登記建物は、普段その住宅で生活している間には問題として意識されないことがあります。固定資産税を支払い、電気や水道を使用し、何十年も家族が暮らしていれば、所有者にとっては当然「自分の家」です。しかし、不動産を売却したり相続したりすると、法務局の登記記録と現地の建物を照合することになり、その段階で初めて未登記であることが分かる場合があります。

まず理解しておきたいのは、固定資産税の課税と不動産登記が別の制度だということです。自治体が家屋として把握し、固定資産税を課税している建物でも、法務局に建物表題登記が存在しないことがあります。そのため、課税明細書に建物が記載されているから登記済みだと考えるのではなく、実際に登記記録を確認する必要があります。

また、「未登記建物」という言葉が指している状態も一つではありません。建物全体に表題登記がない場合、表題登記はあるものの所有権保存登記がない場合、母屋は登記されているものの離れや倉庫が未登記の場合、増築部分だけが登記へ反映されていない場合などがあります。それぞれ必要となる確認や手続きが違うため、最初に現在の状態を正確に分類することが重要です。

 

未登記建物を安全に売買するための基本は、「現地の建物」「法務局の登記」「自治体の課税資料」「建物の所有経緯」を重ね合わせ、何が登記され、何が登記されていないのかを明確にすることです。

そのうえで、建物をどのように売却するのかを考えます。中古住宅として次の所有者が利用するのであれば、売却前に登記を整えることが取引を進めやすくする場合があります。住宅ローンを利用する買主では金融機関から登記整理を求められる可能性もあるため、早めに確認する意味があります。一方、老朽化した建物を解体し、土地として利用することが前提であれば、登記費用、解体費用、売却時期などを比較して対応方法を検討することになります。

価格についても、「未登記だから建物価値はゼロ」「登記すればその費用以上に高く売れる」という単純な考え方はできません。市場で建物を利用したい購入者がいるのか、土地として評価される物件なのか、登記整理にどの程度の費用と時間が必要なのかによって判断は変わります。福岡市やその近郊の住宅地と、福岡県内・九州圏の郊外では土地と建物に対する市場の評価も異なるため、その物件がどのような購入者を想定できるのかを考える必要があります。

相続した未登記建物では、さらに所有関係の確認が重要になります。土地が現在の相続人名義になっていても、未登記建物まで当然に同じ人の所有だと判断できるとは限りません。誰が建て、どのように相続されてきたのかを確認しなければならないことがあります。建築当時を知る家族がいるのであれば、工事資料や写真、固定資産税関係資料などと合わせて情報を残しておくことが、将来の売却や相続を進めるうえで役立ちます。

売主側では、未登記と分かったからといって、査定を依頼する前に慌ててすべての登記を済ませる必要があるとは限りません。まず売却方針を考え、その建物を残して売るのか、解体を前提とするのか、どの時点で登記を整えるのかを判断します。一方、買主側では「売主が登記する予定だから大丈夫」という説明だけで判断せず、どの登記をいつまでに行い、費用を誰が負担し、住宅ローンの条件と整合しているのかを確認することが必要です。

未登記という事実そのものよりも、その状態を把握しないまま契約を進めることの方が、不動産取引では大きな問題になりやすいため、売却・購入の早い段階で調査して条件を整理することが大切です。

 

土地家屋調査士、司法書士、建築士、不動産会社、行政などは、それぞれ確認できる分野が異なります。建物表題登記、所有権の登記、建築上の状態、売買条件を一つの問題として曖昧に処理するのではなく、必要な専門家の役割を分けて整理することが未登記建物では特に重要になります。

長年家族が暮らしてきた住宅が未登記だったからといって、その建物の利用価値や不動産としての可能性まで失われるわけではありません。まず現在の状態を確認し、過去の経緯をできる範囲でたどり、次の所有者へどのような状態で引き渡すのかを決める。その順序を守ることで、未登記建物がある不動産でも、売主と買主の双方が状況を理解したうえで取引方法を検討できるようになります。


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