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共有名義の不動産はどうやって売る?夫婦・親子・兄弟で所有している場合の注意点

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共有名義の不動産はどうやって売る?夫婦・親子・兄弟で所有している場合の注意点

共有名義の不動産はどうやって売る?夫婦・親子・兄弟で所有している場合の注意点

2026/10/05

はじめに

不動産の登記簿を確認すると、所有者が一人ではなく、夫婦、親子、兄弟姉妹など複数人の名前になっていることがあります。夫婦で住宅を購入するときにそれぞれ資金を出して共有名義にしたケースもあれば、親から子へ持分を贈与したケース、相続によって兄弟姉妹が実家を共有することになったケースもあります。同じ「共有名義」でも、共有になった経緯や共有者同士の関係はさまざまです。

普段その家に住んでいる間は、共有名義であることをあまり意識しないかもしれません。しかし、いざ売却しようとすると、一人だけで所有している不動産とは手続きが大きく異なります。「自分の持分が2分の1あるから、自分の判断で売却できるのではないか」「過半数の持分を持っていれば売れるのではないか」と考える方もいますが、不動産全体を第三者へ売却する場合には、原則として共有者全員の意思をそろえる必要があります。共有物全体の売却は、単なる管理行為ではなく共有物の処分に当たると解されているためです。

一方、自分が所有する「共有持分」そのものについては、不動産全体を売る場合とは考え方が異なります。この違いを理解していないと、「共有者の一人が反対しているから何もできない」「持分だけ売れば簡単に解決する」といった極端な判断につながることがあります。

共有不動産の売却では、「誰が何%持っているか」だけでなく、「不動産全体を売るのか」「持分だけを動かすのか」「共有者全員の意思をそろえられるのか」を最初に整理することが重要です。

さらに、相続による共有では、登記上の名義人がすでに亡くなっている、共有者の一人と長年連絡が取れない、世代交代によって共有者が増えている、といった問題もあります。2024年4月からは相続登記の申請が義務化されており、共有不動産を売却する前段階として相続関係の整理が必要になるケースも少なくありません。

この記事では、共有名義とは何かという基本から、夫婦・親子・兄弟で共有している場合の違い、共有者の一人が売却に反対している場合、所在が分からない場合、相続登記が終わっていない場合、売買契約や決済で確認することまで、共有不動産を売却するときに知っておきたいポイントを順番に解説します。

 

 

 

 

 

第1章:そもそも「共有名義の不動産」とは何か

 

1-1. 一つの不動産を複数人で所有している状態

共有名義とは、一つの土地や建物について複数人が所有権を持っている状態です。登記事項証明書を見ると、それぞれの所有者と「持分2分の1」「持分4分の1」といった割合が記載されています。たとえば夫婦が2分の1ずつ所有している住宅であれば、夫と妻がそれぞれその不動産について2分の1の共有持分を持っていることになります。

ここで誤解しやすいのが、持分2分の1だからといって、土地を物理的に半分ずつ所有しているわけではないという点です。「道路側半分が夫、奥側半分が妻」という意味ではありません。一つの不動産全体に対して、それぞれが割合に応じた所有権を持っている状態です。

同様に建物についても、「1階は夫、2階は妻」という意味ではありません。共有持分は建物の特定部分を示すものではなく、一つの所有権を複数人で共有している関係です。この点を理解すると、共有者の一人だけで不動産全体を第三者へ売却できない理由も分かりやすくなります。

共有持分とは土地や建物を物理的に切り分けた場所ではなく、一つの不動産全体に対して各共有者が持っている権利の割合です。

1-2. 夫婦共有では住宅購入時の資金負担がきっかけになることが多い

夫婦共有の住宅では、購入時に夫婦それぞれが資金を負担しているケースがあります。共働き世帯がそれぞれ住宅ローンを利用して住宅を購入した場合や、夫が住宅ローンを組み、妻も自己資金を出して取得した場合などです。実際の資金負担に応じて持分を設定し、夫婦共有として登記されている住宅は珍しくありません。

売却するときには、「夫が住宅ローンを払っているから夫だけの判断で売れる」とは限りません。登記上、妻にも持分があるのであれば、不動産全体を売却する際には妻の意思も確認する必要があります。日常的な住宅ローンの負担者と、不動産の所有者は同じ問題ではないからです。

また、離婚に伴って共有住宅を売却するケースでは、売却そのものだけでなく、住宅ローンの残債、売却代金の配分、財産分与など複数の問題が重なることがあります。不動産売却の手続きと夫婦間の財産関係は分けて整理する必要があります。

夫婦共有の住宅では、「誰が住んでいるか」「誰が住宅ローンを払っているか」ではなく、まず登記上の所有者と持分を確認することが出発点です。

 

1-3. 親子共有では「親が高齢になったとき」が一つの注意点になる

親子共有になる理由もさまざまです。親子で資金を出して二世帯住宅を購入したケース、親の土地に子が資金を出したケース、親から子へ持分を贈与したケースなどがあります。共有になった当初は親子の意思が一致していても、10年、20年と時間が経過すると状況は変わります。

特に注意したいのが、親が高齢になった後の売却です。不動産を売却するためには、所有者本人が売却内容を理解し、意思表示できることが重要です。家族だからといって、子が当然に親の持分まで自由に処分できるわけではありません。

また、親が亡くなれば親の共有持分は相続の対象になります。たとえば父と長男が2分の1ずつ所有していた住宅で父が亡くなった場合、父の2分の1の持分について相続が発生します。その結果、母や他の子どもなどが相続人となれば、それまで2人だった権利関係がさらに複雑になる可能性があります。

親子共有の不動産では現在の売却だけでなく、親の高齢化や将来の相続によって共有関係がどう変化するかまで考えておくことが重要です。

 

1-4. 兄弟共有では相続をきっかけに共有者が増えやすい

兄弟姉妹の共有で多いのが、親の不動産を相続したケースです。親が亡くなり、遺産分割をしないまま法定相続分による共有状態が続いている場合や、遺産分割によって兄弟姉妹で持分を取得している場合があります。

兄弟が2人だけで、お互いに連絡を取り合っている間は大きな問題がないこともあります。しかし、そのうちの一人が亡くなると、その持分についてさらに相続が発生します。配偶者や子どもへ持分が引き継がれれば、共有者が3人、4人、5人と増えていく可能性があります。

共有者が増えるほど、売却するときに意思を確認しなければならない人数も増えます。遠方に住む共有者や、ほとんど交流のない親族が含まれることもあり、相続が何世代も続くと権利関係を把握するだけでも時間がかかります。

2024年4月1日から相続登記の申請が義務化され、相続によって不動産を取得したことを知った相続人は原則として3年以内に相続登記を申請する必要があります。施行前の相続についても対象となり、一定の経過措置があります。

相続による共有不動産は放置するほど共有者が増える可能性があるため、「いつか売ればよい」と先送りすること自体が将来の売却を難しくする場合があります。

 

 

 

 

 

第2章:共有不動産を売却するときの基本的な進め方

 

2-1. 不動産全体を売却するなら共有者全員の意思確認が基本

共有不動産を一般的な中古住宅や土地として第三者へ売却する場合、基本になるのは共有者全員の合意です。共有物全体の売却は共有者の権利そのものを失わせる法律上の処分に当たり、共有者の一人が他の共有者の持分まで勝手に売却することはできません。法務省の共有制度に関する資料でも、共有物全体の売却などの法律上の処分には共有者全員の同意を要すると整理されています。

たとえば夫が持分3分の2、妻が3分の1を所有している場合でも、「夫が過半数を持っているから売却できる」ということにはなりません。共有物の管理に関する事項を持分価格の過半数で決めるルールと、不動産全体を売却することは別だからです。

そのため売却活動を始める前に、共有者全員が本当に売却する意思を持っているのかを確認しておく必要があります。売出価格についても、「売ることには賛成だが、その価格では売りたくない」という意見の違いが生じることがあります。

共有不動産では、買主が見つかってから共有者の意見をまとめるのではなく、売却活動を始める前に売却方針を共有者間で整理しておくことが重要です。

2-2. 自分の「共有持分」だけを処分する話は別に考える

共有不動産全体の売却と、自分が所有している共有持分の処分は分けて考える必要があります。共有者は自己の持分について権利を持っているため、不動産全体を売却する場合とは異なる問題になります。

ただし、「法律上持分を処分できる」という話と、「一般の住宅市場で通常の不動産と同じように売れる」という話もまた別です。たとえば夫婦が2分の1ずつ共有する一戸建てで、夫の2分の1だけを第三者が購入したとしても、その第三者は住宅全体を単独所有できるわけではありません。妻との共有関係に入ることになります。

そのため、共有持分だけの取引は買主が限定されやすく、不動産全体を通常の市場で売却する場合と同じ価格水準で単純に計算できるとは限りません。「土地全体が3,000万円だから2分の1持分は1,500万円」と機械的に考えられるものではないということです。

法務省も、所在不明共有者に関する制度説明の中で、一般に共有持分だけを売却して得る代金より、不動産全体を売却して持分に応じて代金を受け取る方が高額になりやすいことを制度創設の背景として示しています。

「持分だけなら処分できる可能性がある」という法律上の話と、「持分だけを売ることが経済的に有利か」という判断は分けて考える必要があります。

 

2-3. 売却前には登記簿で共有者と持分を確認する

共有不動産の売却相談では、最初に登記事項証明書を確認することが重要です。家族の認識では「夫婦共有」「兄弟3人の共有」と思っていても、登記上の所有者がその認識と一致しているとは限りません。

特に相続した不動産では、親や祖父母の名義が残っている場合があります。親族間では「長男が実家を引き継いだ」という認識になっていても、相続登記がされていなければ、登記上は亡くなった親名義のままということがあります。その状態から売却する場合には、相続関係を確認して必要な登記を行う必要があります。

2024年4月から相続登記が義務化されており、正当な理由なく義務に違反した場合には10万円以下の過料の対象となる可能性があります。また、遺産分割がまとまらず期限内に相続登記を行うことが難しい場合には「相続人申告登記」という制度も設けられています。ただし、相続人申告登記は売却に必要な権利関係を最終的に確定する登記とは役割が異なるため、売却時には別途整理が必要です。

共有不動産の売却では、家族の認識ではなく登記上の所有者を確認し、相続未登記があれば売却手続きと並行して早めに整理することが大切です。

 

2-4. 売却価格だけでなく「手取りをどう分けるか」も先に話しておく

共有者全員が売却に賛成していても、売却代金をどう分けるかで意見が分かれることがあります。基本的には共有持分が重要な基準になりますが、実際の家庭では「自分が固定資産税を長年払ってきた」「自分だけが修繕費を負担した」「親の介護をしてきた」など、さまざまな事情が持ち出されることがあります。

これらの事情がどのような法的・税務的扱いになるかは個別事情によります。不動産会社が家族間の財産関係を独自に決めることはできません。必要に応じて弁護士、税理士、司法書士などの専門家と整理することになります。

また、仲介手数料、抵当権抹消費用、測量費、建物解体費など、売却に伴う費用を誰がどの割合で負担するのかも確認しておくと、決済直前のトラブルを防ぎやすくなります。単純に売買価格だけを共有持分で割れば終わりとは限りません。

共有者間では「いくらで売るか」だけでなく、「売却代金から何を差し引き、最終的な手取りをどう整理するか」まで事前に話し合っておくことが重要です。

 

 

 

 

 

 

第3章:共有者の一人が反対・不明・死亡している場合はどうなる?

 

3-1. 一人が売却に反対している場合、持分の多さだけでは解決できない

共有不動産で難しいのが、「3人のうち2人は売りたいが、1人だけ売りたくない」というケースです。たとえば兄弟3人で実家を共有しており、兄と妹は売却を希望しているものの、弟だけが「親の家を残したい」と考えている場合です。

ここで「2対1だから売却できる」と考えることはできません。共有物の管理に関する事項については持分価格の過半数で決められるものがありますが、不動産全体の売却はそれとは性質が異なります。法務省資料でも、共有物全体の売却等の法律上の処分には共有者全員の同意が必要と整理されています。

2023年4月施行の改正民法では、共有物の形状または効用の著しい変更を伴わない「軽微変更」については持分価格の過半数で決定できるようになりました。しかし、これは共有不動産全体を第三者へ自由に売却できるようになったという改正ではありません。

共有者の多数が売却に賛成していても、それだけで反対する共有者の持分まで含めて不動産全体を通常売却できるわけではありません。

まずは、なぜ売却に反対しているのかを確認することが現実的です。価格への不満なのか、思い入れなのか、住み続けたいのかによって解決方法は異なります。

 

3-2. 「共有者と連絡が取れない」場合には新しい制度もある

相続を繰り返した共有不動産では、「共有者の名前は分かっているが現在どこに住んでいるか分からない」「戸籍を追って初めて存在を知った」ということがあります。以前は所在不明共有者がいることで、不動産全体の売却が事実上止まってしまうことが大きな問題となっていました。

そこで2023年4月施行の改正民法では、所在等不明共有者がいる場合について新しい制度が設けられました。一定の要件を満たせば、裁判所の決定を得て所在等不明共有者の持分を取得する制度や、不動産全体を第三者へ譲渡するため、その持分を譲渡する権限を付与してもらう制度があります。

ただし、「連絡が取れないからすぐ制度を使える」というものではありません。登記簿や住民票など必要な調査を行ったうえで、裁判所が所在等不明と認める必要があります。また、所在等不明共有者の持分に相当する金銭の供託などの手続きも関係します。

さらに、相続によって生じた遺産共有の場合には特別な制限があり、法務省資料では、所在等不明共有者の持分取得・譲渡制度について相続開始から10年を経過していなければ利用できないとされています。

所在不明の共有者がいても現在は解決のための制度がありますが、通常の売却より法律手続きが複雑になるため、早い段階で専門家を交えて検討する必要があります。

3-3. 共有者が亡くなっている場合は相続人の確認が必要

売却しようと登記簿を取得したところ、共有者の一人がすでに亡くなっていることが分かる場合があります。この場合、「亡くなっている人を除いた共有者だけで売却する」ということはできません。その人が持っていた権利は相続の対象となるためです。

たとえば兄弟3人が3分の1ずつ所有しており、そのうち一人が亡くなった場合、その3分の1の持分について相続が発生します。亡くなった共有者に配偶者と子どもがいれば、それらの相続人が関係する可能性があります。さらにその相続人の一人が亡くなっていれば、次の相続まで調査する必要が生じることがあります。

長期間相続登記をしていない不動産ほど、こうした「数次相続」によって関係者が増える可能性があります。法務省も、相続未登記の土地について戸籍等を調査すると、数次相続によって相続人が多数になっているケースがあることを、共有制度見直しの背景として挙げています。

亡くなった共有者の名前が登記簿に残っている場合には、その持分が消えたのではなく、誰がその権利を承継しているのかを確認する必要があります。

相続関係が複雑な場合は、戸籍収集や相続登記を司法書士へ依頼することもあります。売却を予定しているのであれば、買主が決まってから始めるのではなく、売却準備の段階で確認しておいた方が進めやすくなります。

 

3-4. 話し合いで共有状態を解消できない場合には共有物分割という考え方もある

共有状態を将来にわたって続けたくないものの、共有者同士の話し合いでは解決できない場合には、「共有物分割」という制度が関係することがあります。これは単純な不動産仲介による売却とは異なり、共有関係そのものを解消するための法的な手続きです。

共有物をどのように分けるかは、不動産の性質や共有者の事情によって異なります。土地を物理的に分ける方法が現実的なケースもあれば、一人が不動産を取得して他の共有者へ金銭を支払う形が検討されることもあります。裁判による分割では、事情によって競売による換価が関係する場合もあります。

裁判所には、複数人が共有する不動産について判決などで競売を命じられた場合に利用する「形式的競売」の手続きがあります。これは債権回収を目的とした通常の強制競売とは異なります。

ただし、共有物分割は「一人が売却に反対したらすぐ裁判」という意味ではありません。時間や費用、家族関係への影響もあるため、まず任意の話し合いによる解決が可能かを検討し、それでも難しい場合に弁護士などへ相談して法的な選択肢を整理することになります。

共有物分割は通常の不動産売却とは別の制度であり、共有関係をどう終わらせるかという問題として検討する必要があります。

 

 

 

 

 

第4章:共有不動産をトラブルなく売却するために確認したいこと

 

4-1. 査定を取る前に共有者全員で「売却条件」を整理する

共有不動産の売却では、価格査定を取ること自体よりも前に、共有者同士で大まかな方針を確認しておくことが重要です。全員が売却に賛成しているのか、いつまでに売りたいのか、どの程度の価格なら受け入れられるのかを整理します。

共有者の一人が遠方に住んでいる場合には、誰が不動産会社との窓口になるのかも決めておくと進めやすくなります。ただし、窓口を一人に決めることと、その人が他の共有者の意思を無視して契約条件を決められることは別です。

また、共有者同士で価格感に差がある場合には、不動産会社の査定を共通の判断材料として利用できます。「兄は3,000万円以上で売れると思っているが、妹は2,500万円程度と考えている」という状態なら、まず市場価格を確認したうえで話し合った方が具体的です。

共有不動産では「売るかどうか」だけでなく、価格・時期・費用・連絡窓口などの基本方針を共有者間でそろえてから市場へ出すことが、トラブル防止につながります。

 

4-2. 住宅ローンや抵当権が残っている場合は残債も確認する

夫婦共有の住宅では、住宅ローンが残った状態で売却することがあります。登記簿上の所有持分だけでなく、誰がどの金融機関から借りているのか、抵当権がどのように設定されているのかを確認する必要があります。

一般的な住宅売却では、買主へ所有権を移転する際に既存の抵当権を抹消できるよう準備します。そのため、売却価格で住宅ローン残債や売却費用を賄えるかどうかは重要です。夫婦それぞれが住宅ローンを利用している場合には、それぞれの残債確認が必要になることもあります。

売却価格よりローン残債等が多い、いわゆるオーバーローンの状態では、不足分を自己資金で補えるのかなど、通常の売却以上に資金計画を確認する必要があります。金融機関の手続きや必要書類、抵当権抹消の条件は個別の融資内容によって異なります。

共有住宅に住宅ローンが残っている場合は、所有持分だけでなく「誰の借入れがいくら残り、売却時に抵当権を抹消できるか」まで早い段階で確認することが重要です。

 

4-3. 契約・決済では共有者全員の本人確認と意思確認が重要になる

共有不動産の売買では、売主が複数人になります。夫婦共有なら夫と妻、兄弟3人共有なら原則として3人が売主として関係します。そのため、契約や所有権移転の手続きでは、それぞれの本人確認や売却意思の確認が重要になります。

共有者全員が同じ地域に住んでいれば比較的調整しやすいのですが、福岡の不動産を東京、大阪、海外などに住む兄弟姉妹と共有しているケースでは、全員が同じ日時に集まることが難しいこともあります。だからといって、必ず全員が契約日に一つの部屋へ集合しなければ売買できないという意味ではありません。

取引の状況によっては委任状などを利用する方法が検討されます。ただし、売買契約、登記、金融機関の手続きでは必要な確認や書類が異なり、本人確認の方法も個別に調整する必要があります。特に所有権移転登記では司法書士による本人確認・意思確認が重要になります。

共有者が遠方にいる場合でも売却できる可能性はありますが、「家族だから代理で署名しておけばよい」と自己判断せず、契約と登記それぞれの手続きを事前に調整することが大切です。

4-4. 「共有にしない」という選択肢も将来の不動産管理では重要

共有不動産の問題を考えるとき、すでに共有になっている不動産をどう売るかだけでなく、これから相続する不動産をどのように承継するかという視点も重要です。相続人が複数いるからといって、必ず不動産そのものを全員の共有名義にしなければならないわけではありません。

たとえば実家を長男が取得し、他の相続人には別の財産を分ける方法が検討できる場合もあります。不動産を売却して現金化したうえで分ける方法もありますし、一人が不動産を取得して他の相続人へ代償金を支払う方法が適するケースもあります。どの方法が適切かは遺産全体の内容や家族関係、資金状況によって異なります。

共有には公平に見える面があります。「兄弟3人だから3分の1ずつ」という分け方は分かりやすいからです。しかし、不動産は預金のように簡単に3分割して利用できる財産ではありません。固定資産税、修繕、賃貸、解体、売却など、将来何かを決めるたびに共有者同士の調整が必要になる可能性があります。

さらに世代が変われば、一人の共有持分をその配偶者や子どもが相続することもあります。最初は兄弟3人だけだった共有関係が、時間の経過とともに多数の親族へ広がることもあります。相続登記が義務化された現在では、名義を放置することも適切ではありません。

相続で不動産を分けるときには「今公平に分けられるか」だけでなく、その名義関係を10年後、20年後にも管理できるかという視点を持つことが大切です。

 

 

 

 

 

まとめ

共有名義の不動産を売却するときに、まず理解しておきたいのは「共有不動産全体」と「共有持分」は同じものではないということです。共有持分2分の1を持っているからといって、土地の右半分や建物の1階部分を所有しているわけではありません。一つの不動産全体について、複数人がそれぞれ割合に応じた権利を持っています。

そのため、一般的な不動産売買として土地や住宅全体を第三者へ売却する場合には、共有者全員の意思をそろえることが基本になります。持分価格の過半数で決められる管理行為がある一方、不動産全体の売却は同じルールではありません。2023年施行の民法改正で軽微な変更について過半数で決められる範囲が整備されましたが、「過半数の持分があれば不動産全体を売却できるようになった」という意味ではありません。

自分の共有持分については不動産全体とは異なる考え方になりますが、持分だけを第三者へ売却する場合には、通常の土地・住宅として売却する場合とは市場性が大きく異なる可能性があります。持分割合をそのまま不動産全体の価格へ掛ければ売却価格になる、と単純に考えない方がよいでしょう。

夫婦共有では、住宅ローンや離婚、売却代金の配分などが問題になりやすく、親子共有では親の高齢化や相続が関係してきます。兄弟共有では、相続を繰り返すことによって共有者が増える可能性があります。同じ共有名義でも、「誰と共有しているか」「なぜ共有になったか」によって、売却前に整理するポイントは変わります。

特に相続による共有では、登記簿上の所有者がすでに亡くなっていることがあります。その場合、その人の持分がなくなったわけではなく、相続人へ権利が承継されています。相続が何度も発生していれば、現在の権利者を確定するために戸籍を遡る必要が生じることもあります。

2024年4月1日から相続登記の申請は義務化されました。相続によって不動産を取得したことを知った相続人には原則3年以内の申請義務があり、2024年4月1日より前に発生した相続も制度の対象です。福岡法務局も、施行日前の相続で既に取得を知っていたケースについて、原則として2027年3月31日までの対応を案内しています。

また、共有者の所在が分からないからといって、現在は必ずしも永久に売却できないわけではありません。2023年4月施行の改正民法によって、一定の要件のもとで裁判所を利用し、所在等不明共有者の持分を取得したり、不動産全体を第三者へ売却するためにその持分を譲渡する権限を得たりする制度が設けられています。ただし、所在不明であることの調査、裁判所への申立て、供託などが関係し、遺産共有では相続開始から10年という要件もあるため、通常の不動産売却と同じ感覚では進められません。

共有不動産の売却で最も大切なのは、最初から「売れる・売れない」と判断することではなく、登記、共有者、持分、相続、住宅ローン、共有者それぞれの意思を一つずつ整理することです。

 

売却を検討するのであれば、まず登記事項証明書で現在の名義と持分を確認します。そのうえで、共有者全員が売却を希望しているのか、希望価格はどの程度なのか、住宅ローンや抵当権が残っているのか、相続未登記がないのかを確認していきます。この順番で整理すれば、どこに問題があるのかが見えやすくなります。

共有者同士の意見が一致している不動産であれば、共有名義だからといって必要以上に難しく考える必要はありません。反対に、共有者の一人が反対している、所在が分からない、亡くなった人の名義が残っているといった場合には、通常の売却活動を始める前に権利関係を整理することが重要です。内容によっては、不動産会社だけでなく司法書士、弁護士、税理士などとの連携が必要になります。

共有名義そのものが問題なのではなく、「誰が権利を持ち、誰が何を希望しているのか分からない状態」のまま時間が経過することが、将来の売却を難しくする大きな原因になります。

夫婦で購入した住宅も、親子で所有する土地も、相続した兄弟共有の実家も、最初は共有者同士の関係が良好であることが多いでしょう。しかし、不動産は長期間所有する財産です。その間には離婚、高齢化、死亡、転居、相続などさまざまな変化が起こります。

だからこそ、共有不動産については「今困っていないからそのままでよい」と考えるだけでなく、将来売却するときに誰の同意が必要になるのか、次の相続が起きたら共有関係がどうなるのかを一度確認しておくことに意味があります。共有関係を正しく把握することは、売却のためだけではなく、その不動産を次の世代へ複雑な状態で残さないための準備にもつながります。


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