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昔の家に「井戸」が残っている土地は売れる?売却・解体前に確認したいこと

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昔の家に「井戸」が残っている土地は売れる?売却・解体前に確認したいこと

昔の家に「井戸」が残っている土地は売れる?売却・解体前に確認したいこと

2026/09/15

はじめに

古い戸建住宅や実家を売却しようとしたとき、庭の隅に石やコンクリートで囲まれた井戸が残っていることがあります。現在もポンプを使って庭の散水などに利用している井戸もあれば、何十年も使っておらず蓋だけが残っているもの、さらには「昔この辺に井戸があったはずだが、すでに埋めたと聞いている」というケースもあります。相続した住宅の場合には、現在の所有者自身が井戸を使った経験がなく、正確な位置や深さ、埋め戻した時期すら分からないことも珍しくありません。

こうした土地を売却するとき、所有者からよく聞かれるのが「井戸がある土地は売れないのでしょうか」という質問です。しかし、井戸が存在するという理由だけで土地の売却ができなくなるわけではありません。買主が住宅を建てる予定なのか、既存住宅をそのまま利用するのか、井戸を残して利用したいのか、撤去や埋め戻しを希望するのかによって判断は変わります。また、井戸が建物の建築予定位置にあるのか、庭の端にあるのかによっても影響の大きさは異なります。

一方で、井戸は目に見える部分だけ確認すればよいものでもありません。現在使用している井戸なら水質や設備の状態、公共下水道との関係などを確認する必要がありますし、使用していない井戸なら安全管理や今後の処理方法を検討する必要があります。過去に埋め戻した井戸の場合には、どのような方法で処理したのかが分からないまま売買されることもあり、後から工事中に井戸跡が確認される可能性もあります。

井戸がある土地の売却で大切なのは、井戸そのものを必要以上に問題視することではなく、「どこにあり、現在どうなっていて、今後どう扱うのか」という事実関係を売却前に整理することです。

特に福岡県内の郊外住宅や昔から集落が形成されてきた地域では、上水道が整備される以前から井戸を生活用水として利用していた住宅もあります。現在は水道を利用していても、庭に古い井戸だけが残っている住宅も考えられます。この記事では、井戸が残っている土地は売却できるのかという基本から、売却前の調査、解体との関係、買主への説明、契約時の考え方まで、不動産売買の実務を踏まえて整理していきます。

 

 

 

 

 

 

第1章:古い住宅に残る「井戸」をどう考えるか

 

1-1. 井戸があるだけで土地が売れなくなるわけではない

「井戸付きの土地」という言葉を聞くと、買主が嫌がって売れなくなるのではないかと心配する所有者もいます。しかし、井戸の存在だけを理由として土地の売買が法律上禁止されるわけではありません。実際には、井戸の位置、使用状況、状態、買主の利用計画などを確認しながら取引条件を整理していくことになります。

例えば敷地が広く、井戸が庭の端にあり、買主がそのまま散水用として利用できるのであれば、必ずしも大きな支障になるとは限りません。反対に、住宅を建てる予定の場所の中央付近に古い井戸が残っている場合には、基礎工事との関係から処理方法を検討する必要が出てきます。つまり、同じ「井戸がある土地」でも売却への影響は一律ではありません。

また、売却方法によっても考え方は変わります。古家付き土地として現況のまま売却するのか、売主が建物を解体して更地にしたうえで売却するのか、買主が解体を行う条件で売買するのかによって、井戸の確認や処理を誰がどの時点で行うのかが違ってきます。

井戸の存在自体よりも重要なのは、「井戸があることを把握したうえで、売主と買主がその扱いについて認識を共有できているか」という点です。

売却前の段階で存在を把握しているのであれば、それは取引条件を整理するための情報になります。最も避けたいのは、売主が知っていた井戸について何も整理しないまま売却し、引渡し後の建築工事や解体工事で問題になることです。

 

1-2. 「使っている井戸」「使っていない井戸」「井戸跡」は分けて考える

一口に井戸といっても、その状態には大きな違いがあります。現在もポンプが動いて散水や洗車などに利用している井戸、すでに何年も使っていないものの井戸そのものは残っている状態、過去に埋め戻されて地表からは確認できない状態などがあります。不動産売買では、まずこの違いを整理することが重要です。

現在も利用している井戸であれば、設備が正常に動くか、水をどのような用途に使っているかなどを確認します。飲用している場合には、単に水が出るかどうかだけではなく、水質の問題もあります。福岡市も、井戸水は周辺環境の変化、有害物質、病原体、地震や水害などによって水質が悪化する可能性があるとして、設備の点検や水質確認を案内しています。

一方、現在使用していない井戸については、「使えない井戸」なのか「使っていないだけなのか」は別の話です。ポンプが撤去されている、内部の状態が確認できない、蓋だけがされているなど、状況によって対応が異なります。また、過去に埋め戻した井戸は、外から見ただけでは存在自体が分からないことがあります。

売却前には「井戸があるか、ないか」だけではなく、「現存しているのか、使用中なのか、使用停止なのか、過去に埋め戻した井戸跡なのか」まで分類しておくと、その後の調査や説明が進めやすくなります。

古い家の場合には、現在の所有者が知らなくても、以前の所有者や近隣住民が井戸の存在を覚えていることがあります。相続物件では特に、「子どもの頃は井戸があった」「昔、父が埋めたと聞いた」といった家族の記憶も手掛かりになります。ただし、記憶だけで正確な位置や処理方法まで断定しないことも重要です。

 

1-3. 井戸には浅井戸・深井戸など構造の違いもある

昔ながらの住宅で見られる井戸として、地面を掘り下げ、周囲を石やコンクリートなどで補強した井側井戸があります。一方、現在でも利用されている井戸には、地下深くまで管を入れて地下水をくみ上げるボーリング井戸もあります。福岡市の案内でも、井側井戸とボーリング井戸を分けて説明しています。

この違いは、不動産を売却するときに必ず専門的な名称まで説明しなければならないという意味ではありません。しかし、撤去や埋め戻しを検討するときには、井戸の構造や深さが工事内容に関係する可能性があります。地表部分だけを見て「深さは数メートル程度だろう」と決めつけるべきではありません。

また、井戸が建物の基礎や塀、庭、物置などの下に隠れているケースもあります。長期間使われていない住宅では、植栽や土に覆われて井戸の蓋が分かりにくくなっていることもあります。解体工事を始めてから初めて位置が明確になる可能性も考えておく必要があります。

井戸を処理する場合には、地表に見えている部分だけで判断せず、構造・深さ・位置を可能な範囲で確認したうえで工事方法を検討することが基本です。

特に売却前に建物を解体する場合には、解体業者へ井戸の存在を事前に伝えておくことが大切です。何も伝えないまま工事を進め、重機作業中に井戸が確認されれば、その場で追加作業や工期変更を検討することになりかねません。

 

1-4. 井戸には「水源」と「土地に残る構造物」という二つの側面がある

井戸を考えるとき、多くの人はまず「水が出る場所」と考えるでしょう。しかし土地売買では、井戸は水源であると同時に、地下へ続く構造物でもあります。そのため、現在水を使う予定がないとしても、土地利用との関係を確認する必要があります。

例えば買主が既存住宅をそのまま利用するのであれば、庭の井戸を残しても大きな問題にならないことがあります。ところが建物を解体し、新しい住宅を建築する場合には、建築予定位置や基礎の配置との関係が重要になります。土地を駐車場や店舗、共同住宅など別の用途へ変更する場合も同様です。

また、井戸を残す場合には安全面への配慮も必要です。使用していない古い井戸で蓋が十分でなければ、人や物が落下する危険があります。厚生労働省の飲用井戸に関する衛生対策でも、井戸やその周辺について、人や動物がみだりに立ち入らないよう適切な措置を講じる考え方が示されています。

井戸は「現在水を使うかどうか」だけでなく、「土地の中にどのような状態で残っているのか」という視点から確認する必要があります。

この考え方を持つと、「水道があるから井戸は関係ない」と単純に判断しにくくなります。使わない井戸であっても、売却・解体・建築のどこかで確認対象になる可能性があるためです。

 

 

 

 

 

第2章:売却・解体前にどこまで調べればよいのか

 

2-1. まず現地と家族の記憶から情報を整理する

井戸について調べるとき、最初から大掛かりな調査を行う必要があるとは限りません。まずは現地を確認し、井戸らしい構造物があるか、古いポンプが残っていないか、コンクリート製や石造りの蓋がないかなどを確認します。そのうえで、過去の所有者や家族に聞けるのであれば、以前どのように使っていたのかを確認します。

相続した実家の場合には、亡くなった親が管理しており、相続人は詳しいことを知らないケースがあります。その場合でも、「子どもの頃に庭のこの辺りで水をくんでいた」「数十年前の建替えのときに埋めたらしい」といった情報が得られることがあります。古い住宅写真や工事写真、配置図などが残っていれば参考になる場合もあります。

ただし、「埋めたと聞いている」という話と、「どのような方法で埋め戻したか確認できる」という話は分けて考えます。家族から聞いた話しか分からないのであれば、その状態のまま「詳細不明」として整理する方が安全です。

売主が分からないことまで推測して断定する必要はなく、「分かっていること」と「分からないこと」を分けて整理することが重要です。

不動産売買では、すべてを完全に解明してからでなければ売却できないわけではありません。むしろ現在把握している情報を正確に整理し、必要であれば買主と調査方法や取扱いを協議するという考え方が現実的です。

 

2-2. 解体するなら業者へ井戸の存在を先に伝える

古家付き土地を更地にして売却する場合、解体業者への情報共有は非常に重要です。井戸の存在を知っているのであれば、見積りを依頼する段階で伝えておいた方がよいでしょう。現地調査の際に位置を確認してもらい、井戸の処理が解体工事費に含まれるのか、別途費用になるのかを確認できます。

井戸の構造や深さ、周辺状況によっては、処理方法や費用が変わる可能性があります。そのため、インターネットで見た「井戸の撤去費用は一律○万円」といった数字だけで売却予算を組まない方が安全です。工事会社によって対応範囲も異なります。

また、古い住宅では建物解体後に地面が見えるようになって初めて、井戸の位置や井戸跡の状態が明確になるケースがあります。売主が把握していなかった井戸が見つかる可能性もゼロではありません。

建物を解体してから井戸の存在を相談するのではなく、分かっている井戸については解体前の見積り段階から業者へ伝えておく方が、追加工事や工程変更を防ぎやすくなります。

売却のための解体では、井戸だけではなく、古い浄化槽、地下基礎、給排水設備、ブロック、庭石など、地中や敷地に残るものをまとめて確認しておくと、引渡し条件も整理しやすくなります。

 

2-3. 「埋め戻すか、残すか」は買主の土地利用も見て決める

井戸を見つけたからといって、必ず売主が売却前に埋め戻さなければならないとは限りません。井戸を残した状態で取引することも考えられます。重要なのは、その状態を買主が理解したうえで購入することです。

例えば、買主が庭の散水や洗車用として井戸を利用したいと考えているなら、むしろ残してほしいという希望が出る場合があります。一方、新築住宅を建てる予定で井戸が建築位置に重なるのであれば、処理を希望する可能性があります。この場合、売主負担で引渡しまでに処理するのか、現況のまま引き渡して買主が処理するのかを話し合うことになります。

売主が先に処理すれば買主にとって分かりやすくなる場合がありますが、買主の計画を確認せずに工事をしてしまうことが最善とは限りません。特に土地売却では、買主側の建築会社が土地利用計画を確認したうえで処理方法を検討した方が合理的なケースもあります。

井戸の処理は「売る前に必ず売主が行うもの」と機械的に考えるのではなく、売却条件と買主の利用計画を踏まえて決めることが大切です。

ただし、使用していない井戸をそのまま残す場合でも、安全上問題のない状態にしておく必要があります。蓋が傷んでいるなど危険がある場合には、売却活動以前に安全対策を検討した方がよいでしょう。

2-4. 飲用するなら「水が出る」だけでは足りない

現在も井戸を使用している住宅では、買主から「この井戸水は飲めますか」と聞かれることがあります。しかし売主や不動産会社が見た目だけで飲用可能と保証することはできません。透明で臭いのない水であっても、それだけで安全性を判断できるわけではないためです。

厚生労働省の飲用井戸等衛生対策要領では、飲用井戸について設備や周辺の清潔保持、定期的な点検、水質検査などが示されています。また福岡市も、飲用開始前の水質検査や、使用中の濁り・色・臭い・味などの確認を案内しています。井戸水は周辺環境の変化によって水質が変化する可能性があるため、過去に問題がなかったという理由だけで将来も安全とは限りません。

売却時に買主が井戸水を飲用したいのであれば、必要に応じて水質検査を検討することになります。ただし、いつ誰が検査を行うのか、検査結果をどのように扱うのかは個別の売買条件によります。

井戸水については「水が出ること」と「飲用に適すること」を分けて説明し、飲用を予定する場合には水質を確認するという考え方が必要です。

なお、井戸水を飲用以外の用途に使う場合でも、用途に応じた管理は必要です。売却資料に「井戸あり」とだけ記載するより、「現在は庭の散水に使用」「長期間未使用」など、実際の状況を説明した方が買主も判断しやすくなります。

 

 

 

 

 

第3章:井戸は土地価格や買主の判断にどう影響するのか

 

3-1. 井戸があるから一律に土地価格が下がるわけではない

井戸が残っている土地だから、必ず土地価格を一定額下げなければならないという基準があるわけではありません。価格への影響は、井戸の状態、位置、処理費用、敷地の広さ、建築計画、地域の需要などによって異なります。

例えば500㎡を超えるような広い敷地の端に井戸があり、住宅建築にほとんど影響しないのであれば、井戸の存在が価格形成の中心になるとは限りません。反対に、小さな住宅地で建物配置の自由度が低く、建築予定位置に井戸がある場合には、買主が処理費用や工事工程を考慮して価格を判断する可能性があります。

つまり「井戸があるから○万円減額」という計算ではなく、買主がその土地を利用するうえでどの程度の追加負担や不確実性があるのかが重要になります。処理費用が明確になっていれば、買主も判断しやすくなります。

井戸による価格への影響を考えるときは、井戸の存在そのものより、その井戸が土地利用にどれだけ影響するのかを見る必要があります。

井戸以外の条件も同様です。古い浄化槽、擁壁、高低差、越境などがあっても、それだけで価格が決まるわけではありません。不動産価格は複数の条件を総合して形成されます。

 

3-2. 買主が気にするのは「何が起きるか分からない状態」

買主にとって最も判断しにくいのは、「井戸がありますが詳しいことは何も分かりません」という状態です。もちろん相続物件などでは本当に分からないこともありますが、確認できる範囲まで整理しておけば、買主の不安は大きく変わります。

井戸の位置が分かる、現在は使っていない、深さは不明、ポンプは撤去済み、過去の処理記録はない、といった情報でも判断材料になります。分からないものを「問題ないと思います」と説明するより、分からないこと自体を明確にした方が適切です。

買主側が新築を予定している場合には、建築会社へ情報を伝え、建物配置との関係を確認することもできます。土地の購入前に建築会社が現地を見ることで、井戸の位置が建築計画に影響するか判断しやすくなります。

買主にとって重要なのは「井戸がない土地」であることだけではなく、「井戸について分かっている情報が整理され、購入後の対応を予測できる土地」であることです。

売主側から見ても、事前整理にはメリットがあります。買付けが入って契約直前になって初めて井戸の扱いを協議すると、条件調整に時間がかかります。販売開始前に分かる範囲を確認しておけば、価格や引渡し条件を組み立てやすくなります。

 

3-3. 福岡・九州では郊外や古い住宅地ほど確認する価値がある

福岡市の市街地だけを見れば水道利用が一般的ですが、福岡県内には古くから形成された住宅地、農村部、旧集落なども多く存在します。そのような地域では、昔の生活用水として井戸が使われていた住宅も考えられます。

現在は上水道だけを利用している住宅でも、敷地の中に昔の井戸が残っていることがあります。福岡市自身も現在の井戸水利用者向けの管理案内を行っており、さらに市内の地下水について定期的な水質調査を実施しています。福岡県も水道法等の適用を受けない飲用井戸について衛生対策実施要領を設けています。

また、敷地の広い古民家、農家住宅、相続した実家などでは、母屋だけでなく納屋、倉庫、庭、古い給排水設備など複数の確認事項が出てきます。そのため井戸だけを単独で調べるというより、敷地全体の利用履歴を確認する中で井戸の存在も整理するとよいでしょう。

特に築年数の古い戸建住宅や相続した実家、昔からの集落にある土地では、「井戸はないだろう」と決めつけず、一度敷地の履歴を確認しておく価値があります。

もちろん、地域が古いから必ず井戸があるという意味ではありません。福岡県内でも地域や住宅によって事情は大きく異なるため、あくまで個別の土地について確認することが基本です。

 

3-4. 井戸を利用できることがメリットになる場合もある

井戸は売却上の注意点として語られることが多い一方、利用目的によってはメリットと考える人もいます。庭の散水、洗車などに地下水を使えるのであれば、それを魅力と感じる買主もいるでしょう。

ただし、「井戸がある=水道代が必ず安くなる」と単純に説明するのは適切ではありません。ポンプを動かすための電気代、設備の維持管理、故障時の修理、水質確認などが必要になるからです。また、井戸水を使用後に公共下水道へ流す場合には、自治体の下水道使用料の取扱いを確認する必要があります。

福岡市では、一般家庭で井戸水を利用して公共下水道へ排水する場合、世帯人数などに応じて汚水排出量を認定する仕組みがあります。また、井戸の新設・増設・廃止・用途変更などが下水道使用料算定上の変更になる場合、届出が関係します。

井戸を残して利用する場合には、「無料で使える水」という単純なメリットではなく、管理・設備・水質・下水道使用料まで含めて考える必要があります。

売却広告でも、井戸が使えることを魅力として表示するのであれば、実際の利用状況を確認したうえで説明することが重要です。長年使用していない井戸を「使用可能」と断定することは避けるべきでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

第4章:売買契約でトラブルを防ぐために整理したいこと

 

4-1. 売主が知っている井戸の情報は事前に共有する

不動産売買では、土地や建物について売主が把握している状況を買主へ伝えながら契約条件を整理します。国土交通省が示している物件状況等報告書の参考例でも、売主が現在知っている物件の状況を買主へ説明するという考え方が採られています。

井戸についても、売主が存在を認識しているのであれば、不動産会社へ伝えておくことが重要です。現在使用しているのか、使用していないのか、いつ頃まで使っていたのか、過去に埋めたのか、場所はどこなのかなど、分かる範囲を整理します。

ここで重要なのは、すべての情報を完全に調査しなければ説明できないわけではないということです。例えば「昭和の頃に使用していたと聞いているが、現在は使用しておらず深さは不明」という説明でも、売主が知っている範囲を示すことはできます。

井戸に関する説明では、分からないことを無理に断定するより、売主が知っている事実と確認できていない事項を明確に分けることがトラブル防止につながります。

相続物件では特に、この姿勢が重要です。親が管理していた井戸について子どもが詳細を知らないことは十分あり得ます。その場合は、「詳細不明」という情報自体を買主と共有したうえで取引条件を検討します。

 

4-2. 「現況のまま引渡す」のか「売主が処理する」のかを曖昧にしない

井戸付きの土地を売る際には、契約までに引渡し時の状態を確認しておくことが大切です。現況のまま井戸を残して引き渡すのか、売主が引渡しまでに埋め戻すのかによって、売主の負担も買主の計画も変わります。

例えば「建物解体更地渡し」という条件で販売している土地であれば、買主は建物だけでなく敷地内の不要物も整理された状態をイメージする可能性があります。その際、井戸をどこまで処理するのかについて認識が違えば、引渡し前に問題になる可能性があります。

反対に「古家付き現況渡し」であれば、井戸も含めて現況を引き継ぐ条件にすることがあります。ただし、現況渡しという言葉だけで何でも説明不要になるわけではありません。分かっている井戸については、その存在と状態を具体的に確認しておいた方が安全です。

売買契約では「井戸がある」という情報だけで終わらせず、「引渡し時にその井戸をどの状態にするのか」まで売主・買主で共有することが重要です。

必要に応じて、売買契約書の特約や物件状況に関する書面などへ井戸の状態と取扱いを記載します。具体的な条文は取引条件によって変わるため、個別案件に合わせて作成する必要があります。

 

4-3. 引渡し後に井戸跡が見つかった場合まで考える

難しいのは、現在地表から確認できない井戸です。売主自身が井戸の存在を知らず、買主が土地を購入した後の掘削工事で初めて古い井戸跡が見つかることも理論上は考えられます。

この場合、どのような責任関係になるかは、「売買契約でどのような条件を定めていたか」「売主が井戸の存在を知っていたか」「買主の利用目的にどの程度の影響があるか」などによって判断が変わります。単に「井戸が出たら必ず売主負担」「現況渡しなら必ず買主負担」と一律に断定することはできません。

だからこそ、売主側で過去の井戸について記憶や資料がある場合には契約前に共有しておく意味があります。また、買主側も古い住宅地や古家付き土地を購入する場合には、解体後や造成時に地中から想定外のものが確認される可能性をゼロとは考えない方が現実的です。

古い井戸跡が後から発見される可能性がある物件では、「発見された場合にどう扱うか」を契約前に整理しておくことで、責任の押し付け合いを防ぎやすくなります。

井戸だけでなく、古い基礎、浄化槽、配管などについても同じ考え方が使えます。古家の解体を伴う土地取引では、地表から見えないものをどこまで契約上整理するかが重要になります。

4-4. 井戸を必要以上に怖がらず「説明できる状態」にして売る

井戸があると分かった瞬間、「先に全部埋めてしまった方が売りやすい」と考える所有者もいるでしょう。しかし、売却前に必ず処理することが最善とは限りません。買主の土地利用計画によっては、井戸を残しても問題がないこともあります。

一方で、「昔からあるものだから大丈夫」と何も確認しないこともおすすめできません。買主が新築を予定している土地なら、井戸の位置や処理方法は建築計画に関係しますし、井戸水を使うなら設備や水質の確認が必要になります。

不動産売却で必要なのは、問題をゼロに見せることではありません。古い住宅や土地には、それぞれ歴史があります。井戸、擁壁、境界、古い配管、増改築など、現在の新築住宅とは異なる条件が存在することがあります。その条件を確認し、買主が判断できる情報へ変えることが実務では重要です。

井戸付き土地を売りやすくする一番の考え方は、井戸を隠すことでも必要以上に怖がることでもなく、「買主へ説明できる状態まで整理しておくこと」です。

そのうえで処理が必要なら処理し、残す方が合理的なら条件を明確にして残します。売主と買主が同じ情報を共有し、それぞれが納得できる状態を作ることが、井戸付き土地の取引では最も重要になります。

 

 

 

 

 

まとめ

昔の住宅や土地に井戸が残っていると、「こんな土地は売れないのではないか」と不安になるかもしれません。しかし、井戸が存在するという理由だけで土地の売買ができなくなるわけではありません。大切なのは、井戸が現在どのような状態にあり、今後その土地をどう利用するのかという点です。

まず確認したいのは、現在も使用している井戸なのか、使っていないものの井戸自体は残っているのか、過去に埋め戻した井戸跡なのかという違いです。現在使用しているのであれば、用途や設備の状態を確認します。特に飲用する場合には、水が出ることと飲用に適することを分けて考え、水質確認が重要になります。福岡市や福岡県でも、飲用井戸について設備の管理や水質確認に関する案内が行われています。

一方、使用していない井戸の場合には、まず安全上の問題がないかを確認します。蓋が傷んでいる、井戸周辺が崩れているなどの状態であれば、売却以前の問題として安全対策が必要になることがあります。そのうえで、井戸をそのまま残すのか、売却前に処理するのかを検討します。

ここで注意したいのは、「売却するなら必ず売主が井戸を埋めなければならない」と一律に考えないことです。買主が井戸を利用したい場合もありますし、土地の端にあって建築に影響しない場合もあります。反対に、新築建物の基礎位置と重なるのであれば、処理を前提に検討することになる可能性があります。

井戸の扱いは、井戸そのものだけで決めるのではなく、土地の広さ、井戸の位置、建築計画、買主の利用目的、処理費用などを総合して判断するものです。

 

売主側では、販売を始める前に可能な範囲で情報を整理しておくと取引が進めやすくなります。井戸の場所、現在の利用状況、過去に利用していた時期、埋め戻した記憶があるか、工事資料が残っているかなどを確認します。相続した住宅で詳細が分からない場合には、分からないことまで無理に答える必要はありません。「存在は聞いているが正確な場所は不明」「以前埋めたと聞いているが施工方法は不明」というように、確認できる事実と確認できない事項を分けることが重要です。

建物を解体する予定であれば、井戸の存在を解体業者へ見積り段階から伝えておくことも大切です。工事が始まってから初めて井戸処理を相談すると、追加費用や工程変更が発生する可能性があります。井戸以外にも古い浄化槽や基礎、庭石、配管などが残っている古家であれば、敷地全体を一緒に確認しておくとよいでしょう。

買主側から見れば、「井戸があること」そのものより、「何が分かっていて、購入後に何をしなければならないのか分からない状態」の方が判断しにくくなります。井戸の位置や状態が整理され、必要であれば処理費用の目安も確認できていれば、購入後の土地利用を検討しやすくなります。

また、井戸を残して利用するのであれば、水質や設備だけでなく、下水道との関係にも注意が必要です。福岡市では井戸水を使用して公共下水道へ排水する場合に、汚水排出量の認定や届出に関係する仕組みがあります。所有者が変わったり、井戸を廃止・用途変更したりする場合には、個別に自治体への確認が必要になることがあります。

そして売買契約では、井戸を現況のまま残して引き渡すのか、売主が処理してから引き渡すのかという点を明確にします。さらに、過去の井戸跡が疑われる場合や、地中の状態が完全には分からない場合には、引渡し後に発見されたときの扱いまで検討しておくと、後のトラブルを防ぎやすくなります。

井戸付き土地の売却で最も大切なのは、井戸をなくすことではなく、井戸について把握している事実を整理し、売主と買主が同じ情報を持った状態で取引することです。

 

古い土地には、その土地が長く使われてきたからこそ残っているものがあります。井戸もその一つです。かつて生活を支えていた井戸が、現在の土地利用では不要になっていることもあれば、今でも庭の散水などに役立っていることもあります。昔からあるものだから問題ないとも、井戸があるから売れないとも、一律には言えません。

売却前に現地を見て、家族から話を聞き、必要に応じて解体業者や建築会社などの専門家へ確認する。そして分かったことを買主へ伝え、残すのか処理するのかを契約条件として整理する。この順序を踏めば、井戸が残っている土地でも通常の不動産売買の中で落ち着いて対応することができます。


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